孫の二乗の兵法 改訂版-III


4. 将の心得

1) 信: 約束を破らない-> ある行動に出ることで相手の信頼を裏切らないか

  • 「巧詐は拙誠に如かず (巧みな言葉で偽って人を欺こうとするよりも、下手でも誠意を示すほうが、ずっと相手に響く) -by 韓非子

2) 義: 正しいことを行う-> 会社のために行った不正が最終的に倒産へ

  • 倫理とは『人の間』が成り立つためのルールで、親子や恋人同士でしか通用しない小さなルールから、絶対に守らなければならないルールなど、それぞれの『人の間』の間柄に従ってルールは異なり、複雑に絡み合う。普遍的な倫理は存在せず、状況に応じて成り立つ側面を持つ -by 和辻哲郎

3) 仁: 相手の立場に立って物事を考える、私利私欲に偏ってないか

  • 「動機善なりや、私心なかりしか -by 稲盛和夫
  • 「自我を確立するには他我を認めよ(agree to disagree): 創造性には個性が大事だが、その発展には他人の個性も尊重する深い思いやりが肝要- by 夏目漱石

4) 勇: 撤退する勇気、無謀の勇は必死に戦うのみ->待ち受けているのは死のみ

  • 「退却は10倍難しい (退却は勝利のための一手段) -by 孫正義
  • 「この死地に力ずくで活路をこじあけます。皆の背には常にこの王騎がついていますよ」

5) 厳: 鬼手仏心、信賞必罰、果断・果決

  • 「君主は、愛せられるより恐れられよ。ただし、恨みや憎悪だけは避け、それでいて恐れられるよう努めよ -by マキャベリー」
  • 「一生懸命に努力して、せっかく99%までの成果を上げても残りのわずか1%の「止め」がしっかりと刺されていなかったら、それは結局はじめからやらなかったと同じことになる。いや中途半端にやっただけ、むしろマイナスになる場合が多いのではあるまいか。とどめを刺さない仕事ぶりがあったら、お互いにその不徹底を大いに恥とするほどの厳しい心がけを持ちたいものである -by 松下幸之助
  • 「実を多くならせると一番木が弱る。そこでいくら惜しくても、思い切って実をまびかなければならない。これは実生活では非常に難しく、うかうかしていると花も実もダメになるうえ、木そのものが弱り枯れたり倒れたりする -by 安岡正篤

上記以外に私の好きな片言隻句:

  • 韓非子いわく、「下君は己の能を尽くし、中君は人の力を尽くし、上君は人の智を尽くす」 (自分の能力を使うのは三流で、他人の知恵を使うのが一流のリーダー)。
  • 大学いわく、「君子必ず其の独りを慎むなり」 (高い倫理観を掲げたとしても人間は弱いもの。それを克服する一つの考え方が、天が自分を常に見ているという意識をもつこと、または自分を超越した何かに畏れること、それによって自分を律すること「慎独」。)
  • 言志四録の著者 佐藤一斎いわく、「人に接するときは暖かい春の心、仕事をするときは燃える夏の心、考えるときは澄んだ秋の心、自分に向かうときは厳しい冬の心」


5. 戦術

1) 風: 戦略編の「陽」を風林火山で具体化、用兵の形とは積水を千尋の谷に切って落とすようなもの
2) 林: 戦略編の「陰」を風林火山で具体化、戦うべきと戦わざるべきとを知る者は勝つ
3) 拙: 「兵は拙速を聞く」-> 拙(つたな)くても 少々荒削りでも速戦即決、早期収束、スピード、相手に時間的余裕を与えてはダメ

  • 「前陣速攻・・・前のめりで卓球板に位置し、反射神経を頼りにとにかく攻める-> 幸福の神様らしき姿が視界に少しでも入ったら、迷わずその髪の毛をつかんで引っ張りだせ -by 石井裕 MIT教授」

4) 詭: 「兵は詭道なり (戦とは所詮、だましあい)」-> 常識をひっくり返す、戦に定石・常道はない、仮説->実行->検証、思い込みを疑え (自分のクセを客観視せよ)

  • ラグビーでゴール5m前まで攻め込むと、皆はチャンスだ、トライがとれるって思う。しかし、僕はチャンスだとは思わない。相手はピンチなので、ディフェンスに集中する。そのため簡単にはトライできない。そんな中、キックか何かで22mラインまで戻されると、あ〜あ、チャンスを逃したと思う。相手もホッとしている。そういう時こそがチャンスなんだよね、実は -by 平尾誠二
  • 個人的価値観や過去の経験に基づきすぎでは? 今の思考パターンで正しい? 二極性で発想してる? (e.g. ボトムアップ vs. トップダウン、マクロ vs. ミクロ、コスト削減 vs. WTPアップ)
  • 市場だと思っていないところも観てる? バリューチェーンを広げてみては?

5) 逃: 「36計逃ぐるに如かず」-> 一度引いて態勢を整える勇気、戦いを避けるのが最善

  • 持続可能な勝ち方 = 「戦わずして勝つ > 短期戦で勝つ > 戦わない > 長期戦で勝つ > 短期戦で負ける > 長期戦で負ける」
  • 「どんな戦上手でも、不敗の態勢を固めることはできるが、必勝の条件までつくりだすことができない (負けないはコントロールできるが、勝ちはコントロールできず敵次第)- 軍形編」

オリジナル 「孫の二乗の兵法」

理念

  • 道: 理念
  • 天: 情報ビッグバン
  • 地: 情報革命はアジアから
  • 将: 優れた将
  • 法: 方法、システム

ビジョン

  • 頂: ビジョン
  • 情: 情報
  • 略: 戦略、省略
  • 七: 勝率7割で勝負
  • 闘: 事を成す

戦略

  • 一: 圧倒的No.1
  • 流: 流れに逆らわない
  • 攻: 複数の打ち手
  • 守: キャッシュフロー経営
  • 群: マルチブランド

将の心得

  • 智: 知力
  • 信: 信義、信用、信念
  • 仁: 仁愛
  • 勇: 勇気
  • 厳: 時には鬼となる

戦術

  • 風: 素早さ
  • 林: 水面下での行動
  • 火: 徹底した行動
  • 山: 動かないこと
  • 海: 平和にすること

孫の二乗の兵法 改訂版-II


3. 戦略

1) 一: 圧倒的No.1になれる分野のみ進出、一瞬でもいいからトップに立つと勝つ意欲が芽生え、常に勝ち続ける社風へ-> 負け犬根性の打破

  • 「(漫画家の卵たちを前に) 君たち、一流の漫画家になりたかったら、一流の本を読んで、一流の映画を見て、一流の音楽を聞きなさい。絵を描くテクニックを身につけることだけが、一流になる道じゃないよ - by 手塚治虫
  • 「未勝利の競争馬に対し、ゴール板を通過した後でもムチを入れ続け、全ての馬を抜き去りトップでゴールする気持ち、勝つ喜びを教え込むのも旗手の役割- by 岡部幸雄
  • 「たとえ毎日1%の改善でも、1年続ければ37倍になる- by 三木谷 浩史」-> 常に改善 (different-special-better)
  • 「100mを人より速く走ることは真の競争ではない。だれも分け入らなかった原野に1人分け入り、孤独に耐えて全力疾走すること、それが真の競争だ。 そこには審判も観客もストップウォッチもない - by 石井裕 MIT教授

2) 流: 勢い、潮流、相手の隙に乗じる、好機をとらえ蓄積した力を一気に放出

  • 「今は小さなニッチであっても5年後、10年後に本流、マスマーケットになっていることが重要- by 孫正義
  • 「知恵ありといえども、勢いに乗ずるに如かず- by 孟子

3) 陰: 守、キャッシュフロー経営、コスト削減、出口戦略 (日露戦争 vs. 大東亜戦争)、より害の少ない方策を選択せよ、守りを知る将だけが勝ち残る

  • 「大きな勝負のできる人は大胆ではなく、むしろ慎重であることが多い。大事を成すのは実は臆病な人。勇気と臆病は対立する概念だと考えられているが、そんな単純なものではない。事業をやるためには、両方を持たなくてはならない- by ユニ・チャーム会長 高原慶一郎」 
  • 「ギャンブルで100くらい勝っていた人が、ちょっとしたミスや失敗で50くらいになった場合、ギャンブラーは大きく『ああ、50も損した』と思う破滅型と、『まだ50もある』と思うゆとり型に分かれる。ゆとり型は『まだ50もあるから、もう一度頑張ろう』と思うのに対し、破滅型は『50を取り返さなければ(取り返すには2倍にしなければ)・・・』との焦りから、無理をして不必要なリスクをとって悪循環に陥りがち。終いには借金を背負う羽目に –by 谷岡 一郎 大阪商業大学長」<- ベンチャー失敗の典型
  • 「経験知を活かすには・・・『こうすればうまくいく』というより『これをやったらうまくいかない』ということを、いかにたくさん知っているかが大切- by 羽生善治 棋士
  • 「不思議な勝ちはあるが、不思議な負けはない - by 野村克也 監督」。諸先輩方にも確認したが、「上手くいくのでは」と思っても失敗したケースは多々あるものの、「これはうまくいかない」と言ったプロジェクトで上手くいったケースは皆無。
  • 「米MBAで主流の考えは『利益の最大化』だが、短期で利益の極大化を図ろうと焦るあまり、かえって損失が大きくなりがち。だから、本質は『損失の回避』である。企業は、損失を回避し、リスクに備え企業を存続させるために、利益を生み出さなければならない –by ドラッガー

4) 陽: 攻、勝き易きに勝つ、圧倒的戦力で急所攻撃、幾多の打ち手 (主作戦を支えるいくつもの柱) 

  • 策に三策あるべし (常に3つの代替案を持て)/ 不満を言うな、オプションを考えよ!(受身から能動への転換)
  • 時間差/運動差でかき回し、蒔き餌でおびき出すことで機動的に相手の不備を創り出せ! -> バントをさせない策より、こちらから仕掛けさせる策-わざとバントしやすい球を投げ 野手が進塁を防ぐバントシフト-が効果的。
  • 陽の原動力ともいうべき「欲」、際限のない欲望、陽だけに偏りそれが度を越すと人は身を滅ぼす。ただ、欲を否定しては原動力となるエンジンが機能しないので、私利私欲をある程度認めつつも省み・省く(陰)努力をし、利他の部分も意識して作っていく。とりわけ、本能に根ざす陽が強い人は、陰を取り入れることで相乗効果を生み、陽がより活かされる。陰陽のバランス/相乗効果、調和の中にも変化がある状態。

5) 化: 変化、進化、臨機応変

孫の二乗の兵法 改訂版-I

私の好きな公式は、京セラ創業者 稲盛和夫さんの「人生の方程式: 結果 = 考え方×能力×情熱」 。そして、実体験を基に「孫子の兵法」を5x5の漢字でうまくまとめたなと感心したのが、SoftBank 孫さんの著書「孫の二乗の兵法」。
今回は、オリジナル「孫の二乗の兵法」にこれまで読んできた中国古典などを当てはめ、自分なりに解釈した改訂版。原則は、「持続可能な勝ち方」。会社の規模は、スタートアップからIPO前のステージ。下線のリンクは、私が以前まとめた詳細な内容なので、そちらも参考に。

1. 理念

1) 道: 大儀名分、志

  • 「生前における真実の深さに比例して、その人の精神は死後も残る。人生二度なし! -by 修身教授録
  • 一燈照隅 万燈照国(いっとうしょうぐう ばんとうしょうこく)」
  • 「志ほど世に溶けやすく、壊れやすく、砕けやすいものはない -by 司馬遼太郎「峠」」 
  • 「経営者や従業員が迷った時に帰って行く心のふるさと。それがビジョンであり、夢であり、経営理念 -by CSK 創業者 大川 功」
  • 「皆が『いい』と賛成することは概ね失敗し、『うまくいくわけがない』と反対されることはなぜか成功する -by セブン&アイHD会長 鈴木敏文

自分の物差し・価値基準をもつこと by 内村航平さん

  • リオが終わった直後、来年は1年間、オールラウンダーとしては休養しようかと考えた。でも月日がたつにつれ、ここまで6種目できてこそ体操と言ってきて、急にスペシャリストに転じるのは自分自身が許さないだろうなと気が変わった。ちゃんと一本筋の通った演技を6種目でつくって、オールラウンダーとして勝負していく。結果として代表選考会で負けるのなら、そのときはスペシャリストで生きる道を探ればいい」
  • 「連覇はどこかで止まる? そりゃ、止まりますよ。あの吉田沙保里さんでも負けたんだから。でも、負けることは怖くない。リオの個人総合決勝は負けたと思ったし、この演技で負けるならしょうがないという気持ちになれた自分自身も確認できた。そういうふうに割り切れたことで、連覇が続こうが途切れようが、僕は自分の演技を追求していけばいいんだといま思うことができる。今後は、勝ち負けよりも演技の内容とか質にこだわっていきたい。結果的にそういう考えの方が、勝ちにも近くなると思う」


2) 天: 天の時、タイミング、機微

  • 「気運というものは、実におそるべきものだ。西郷でも木戸も大久保でも、個人としては、別に驚くほどの人物ではなかった。けれど、かれらは「王政維新」という気運に乗じてやって来たから、おれもとうとう閉口したよ -by 勝海舟(司馬遼太郎の『燃えよ剣』) 」
  • 「新しい産業には、かならずその「予兆」がある。その「予兆」を逃さずにとらえ、これを命がけで事業化しようとする人に対して、天は時流と使命を与える -by CSK 創業者 大川 功」
  • 「経営は時間の関数」-> e.g. 生まれながらにインターネットの環境で育ってきた世代が消費活動を始める2015年以降は、経済基盤がリアルからネットへ大移動。スマートフォンの進化により加速するアプリのクラウド化
  • 「自分、相手、全体」を大局的にとらえ、期が熟したある「時期」に備わった自分・会社の能力や、外部要因の変化「機会」を味方につけるだけでなく、「気運」という天の勢いをも味方につけ、上げ潮のような大きな波にのれるかどうか-> i.e. 時に中る(あたる)「時中
  • 時流を追いかけていくと、時の中心に身を置いている錯覚とともに、流れに巻き込まれ、ものごとの本質を次第に見失うので、大局観という羅針盤が重要
  • 将来への種マキ (10-20%)
portfolio of initiatives
<>
種まきは10-20%

3) 地: 地の利、地理的条件、税制、資源、インフラ、人財、事業ポートフォリオ

4) 将: 大将の器量、リーダーシップ、運気
(如何に大きな志を抱き、如何に優秀な人を多く集めて、彼らと共に自らなすべきことを明確にし、その志を共有化するプロセスを細分化)

  • 「能力や技じゃない その場にいる者達を次々に自分の味方につける。この海においてあの男は、最も恐るべき力を持っている!-by 鷹の目のミホーク」
  • 「自分の能力を使うのは三流で、他人の知恵を使うのが一流のリーダー (下君は己の能を尽くし、中君は人の力を尽くし、上君は人の智を尽くす) by-韓非子
  • ひとつだけ指導者に必要な条件を挙げよと言われれば、「自分より優れた人を使える」ということですな。 -by 松下幸之助
  • 「兵士たちがお腹が空いているのであれば、将軍は最後に食べる。疲れても、暑くても、寒くても、それを見せてはいけない。強敵が目の前にいて、兵士たちが死ぬほど怯えている時、リーダーとして励ませば、それが皆に影響していく。これは小さな団体でも、大きな組織でも変わらない -by コリン・パウエル
  • 「将軍とは、百将や千人将らと同じく役職・階級の名称にすぎません。しかし、そこにたどりつける人間はほんの一握り。数多の死地を越え、数多の功を挙げた者だけが達せる場所です。結果、将軍が手にするのは千万の人間の命を束ね戦う責任と絶大な栄誉。故にその存在は重く、故にまばゆい程に光り輝く。十三の頃より数え切れぬほどの戦場を駆け回り、数万の戦友を失い数十万の敵を葬ってきました。命の火と共に消えた彼らの思いが、全てこの双肩に重く宿っているのですよ。-by 王騎」
  • 「あらゆることを想定し陰ながら見守る『任せる』 vs. 任せたから勝手にやれ『放任』は全く違う- by 西堀 栄三郎」
  • 「自らは利他・分福を施すことで運を呼び込む一方、周りからは部下の機微を察し、勢いがある者を適材適所に配置することで、相手の運気をも取り込む。大将たるもの 運気が強くなくてはならぬ!」

5) 法: 組織、仕組み、制度

  • 「組織とは、異なる個性を認めあうことを土台に、欠陥を持った不完全な人間同士が集まり、足らぬところを補い合い、大きな能力を発揮する生命体- by 西堀 栄三郎」
  • 「楽しく仕事をしてもらうには、その仕事がしたい人にしてもらえばよい (どんな職種でも、その仕事が好きな人はいるので、そういう人を対象に募集をかける) -by ライフネット生命 出口治明 社長)
  • 「生きた経営の意志を持ち、システム化された組織をつくること。初めに明確な経営の意思がなければ企業は成立せず、その意思を伝達し、実現するための経営システムを構築せよ -by McKinseyの土台を築いたMarvin Bower」
  • IT企業の組織図

2. ビジョン

1) 頂: 大局観長期的視点洞察力先見性

  • 「私はよく『2200年』という未来を軸にしてモノを考える。『2200年』に生きている人類に、私たちは何を残すのか、どう思い出されたいのか。そこまで考えると、本質的なことをやらなければならないことに、誰もが気づくはず。一過性の、すぐに廃れてしまうようなものばかり作ってもしょうがない -by 石井裕 MIT教授
  • 当事者意識を持って、3年後を想定しながら、2つ上のポジションにいるつもりで、かすかな兆候から将来の全体像を推し測る訓練をせよ
  • 「若手は、簡単な一手を指すにも数百もの膨大な手を読んで指すが、ベテランは勘でパッと見当をつけて指す。パッパッと指す手には邪念がないから、基本的に悪くない。全体を判断する目、大局観、本質を見抜く力、ばらばらな知識のピースを連結させる知恵といってもいい。逆にいうと、余計な思考を省き、近道を発見するようなもの。その思考の基盤になるのが、勘、つまり直感力や感性。直感の7割は正しい -by 羽生義治」
  • 「聖人は微を見て以って明を知り、端を見て以って末を知る -by 韓非子」・・・かすかな兆候から将来の全体を推し量り、わずかな部分を見て結果を知ることができる。こんな人いるのかなというスーパースター像。

2) 情: 情報、敵情、内情、相手の意図を見抜く

  • 「新しい価値ある情報は、『内』ではなく『外』にある。必要なのは、外へ踏み出す意欲と努力 -by セブン&アイHD会長 鈴木敏文
  • 「本を読みながら傍線を引くなら反対意見に引く。どこが異なり、なぜそうなるのか、その根拠は、逆に自分はなぜそう考えるのか・・・と突き詰めれば、自分の考えを補正、補強、発展させることができる -by セブン&アイHD会長 鈴木敏文
  • 「アムンセンと異なり、『たまたま』使った犬が役立たなかったからといって『そもそも』犬は役立たないと決めたところにスコット隊の悲劇があった-> ちょっと試してうまくいかなかったからといって簡単にあきらめてしまう軽率な態度: 慌て者の過誤」
  • 「分析とはやたらほじくって問題を整理し、分析の海におぼれ 分析のための分析になるより、本質はここにあるのではないかと、仮説を検証するために行うもの -by 元BCG日本代表 内田和成」
  • 「戦略 = 仮説 x PDCA = 精緻&検証可能な仮説 x 絶えず柔軟に修正 -by 経営共創基盤CEO 冨山和彦」
  • 「戦略 = 理想 - 現状= ギャップを埋めるケンカの仕方 -by 元BCG日本代表 御立尚資
  • 「アイディアは、数字・ファクト・ロジックでmonetizeせよ - by 複数の有名企業家+VCs
  • 「重要なことは、正しい答えを見つけることではない、正しい問いを探すことである。間違った問いに対する正しい答えほど、危険とはいえないまでも役に立たないものはない -by ドラッガー
  • 「参謀五戒: 1) 参謀たるもの「イフ」という言葉に対する本能的恐れを捨てよ, 2) 参謀たるもの完全主義を捨てよ, 3) KFS(Key Factors for Success)については徹底的に挑戦せよ, 4) 制約条件に制約されるな, 5) 記憶に頼らず分析を -by 大前研一

3) 省: 省く(枝葉を省き、幹だけを抽出=単純化=本質)、省みる(自己を客観視->自己否定->自己変革)

  • 「困難であればあるほど、期限をできるだけ短く区切ったほうが やるべき課題の本質が見えてきて、不可能が可能になる -by セブン&アイHD会長 鈴木敏文
  • KISS (Keep it simple, stupid) 「もっと簡単にやれ! バカモン」-> 「ごちゃごちゃ考えずに、キスで行け!」
  • 「簡にして要の説明ができないのは、十分に理解できていないからだ -by アインシュタイン
  • 「顧客の注文を受けてから現金を手にするまでの時間の流れを見て、付加価値を生まないムダを取り除くことで、その時間の流れを短縮する -by トヨタ生産方式の発明者 大野耐一」・・・作業工程を改善する場合、付加価値を生みだす生産設備をいじくりがちだが、付加価値を生む行程の割合は通常、非常に小さいので、その部分を改善しても大した効果はでない。付加価値を生まないムダを排除するという、もっと大きな改善チャンスに多くの人は気づかない。
  • 「複数の論点があり相互に矛盾しているため、すべての論点を同時に解くことができないことも多い。例えば普天間基地問題。解くべきは「地元」の問題なのか、「沖縄全体」の問題なのか、「日本」の問題なのか。それも「生活」の問題を解くのか、「安全保障」の問題を解くのか、はたまた「アメリカ」が抱える問題を解決するのか。論点が異なれば解決策も異なってくる。すべての論点を同時に解決できる万能の解決策など存在しない -by 元BCG日本代表 内田和成」
  • 「自己を客観視->否定->変革の難しさ: 己と敵の分析結果が示す道を素直に受け止められず、論理性・客観性を欠いた現実認識は最終的に超甘な前提、希望的観測、精神論へと逃避 - 大東亜戦争の教訓

4) 七: 何となくではなく確実に勝てる7割 (損失は最大でも3割)

  • 「7割の成功が信じられなければ、山には登らない -by 世界初 女性エベレスト登頂者 田部井淳子
  • 「どうこうできるのはせいぜい7割まで、残りの3割は天命で、その辺りを見切れるのが一流 -by 西武元監督 森祇晶
  • 「まさかに備えよ: 近い未来では3割、遠い未来では7割程度の偶発事が起きる-by 矢部正秋(プロ弁護士の思考術)」

5) 胆: 実行力 & 闘争心=胆識

  • 知識->見識->胆識: 知識に判断力が備わると見識、その上に胆っ玉を伴った実行力が加わって初めて胆識 -by 安岡正篤
  • 「頭がいいとか悪いとかはせいぜい数倍の差だが、頑張るという力は人によって100倍の差がある。『努力は決して人を裏切らない』、それが38年間、会社を経営をしてきての実感。 - by 日本電産 創業者 永守重信
  • 「悲観的に考えて、楽観的に対処。最悪の事態をとことん考え、それに耐えるあらゆる手だても考え、それしかなければ着手。そしてスタートしたらくよくよしない -by ヒロセ電機会長 酒井秀樹」 
  • 「以前は一瞬のひらめきだと思っていたが、今は長期間、同じ姿勢で、同じ情熱を傾けられることが才能だと思っている。個人の能力差より、継続できる情熱を持っている人の方が、長い目で見ると伸びる by-羽生義治

アプリのクラウド化-II

「アプリケーション」プラットフォームの時代へ

以前ふれた「インターネット大潮流-V」のように、主戦場は、”自力”で「コンテンツ」を囲い込む閉鎖的・小脳競争から、”補完者”の衆知を集め戦場をより大きな「プラットフォーム」に求めた開放的・大脳競争へ移行。

好調なiPhone/ iPad を追随して他社は類似製品を提供しているが、本家より多少性能が良くても、iTunesなどアップルストア =「アプリケーション・プラットフォーム」を持たないと、ハードの塊でしかない端末はコモディティ化し、価格競争に巻き込まれる宿命にある。これらのことに最初に気づいたのがApple、少し出遅れたけどまだ射程距離圏にいるのがGoogleSNSの分野ではFacebook

Google の戦い方

有料でも需要がありそうなB2B向けに、Google Apps というビジネスソフトを提供。具体的には、Gmail、 Document (Word, Excel, PowerPoint, PDF各種ファイル管理)、Photo(Picasa)、Video (社内ビデオの管理) 、Site (自動的にSEO化され簡易な告知に有効) など。アメリカでは政府や教育機関へも注力。原則、ソフト分野は参入しない方針だが、IEだとしょぼいのでGoogle Appsへのコミットメントとして、サクサク動くGoogle Chromeを投入。

ポイントは、Salesforeなど強敵がいるCRMERP分野は手をつけず、Google Appsという「アプリケーション・プラットフォーム」で協力者の参加を呼びかけている点。

クラウドアプリの黎明期

クラウド三種の神器」ともいわれるのが、メモって、保存して、閲覧するサービス。中でも、プラットフォーム化「アプリケーション・プラットフォーム」へ進化する可能性を秘めたサービスが、メモという汎用性を秘めた切り口を持つEvernote

Evernote: 日々の情報や大切な思い出を記憶する「第2の脳」

1) まずは概況から・・・

  • 本格スタート(β版): 08年6月
  • Funding: $45.5M (Sequoia, DoCoMo, Morgenthaler Ventures など、Series C段階)
  • ユーザー数: 4M以上 (USA 57%, JPN 18%, Spain 4%, UK 3%)
  • 収益源: 使い続けるほど多容量が必要 (はまる顧客を自動的に選別)-> 広告費を殆ど使わず無料から月$5有料サービスへ巧妙に誘導 (freemium model)
  • 有料顧客: 8万超 (全体の約2.2%)-> 利用期間に比例して増加 (e.g. 初期0.5%, 1年継続で8%、2年継続で20%)-> アクティブ利用者に対し、月間変動費9セント vs. 売上25セント-> 1年半前から売上がコストを上回る構造-> 早期に売上増加率18% がユーザー増加率10% を上回る仕組みを確立
  • プラットフォーム化: APIを公開しパートナー数急増-> Trunk「プラットフォーム化」

2) なぜ日本人受けするのか

日本語化して2-3ヶ月で全ユーザーシェア18% (アメリカは約2年で57%)、パートナー数は最大、活用本が数冊出版されるなど、日本でのスタートダッシュは好調。

日々大量の情報が生み出されるネットの世界で情報収集するには、気になる箇所だけを切り抜くこと。逆に言えばムダな情報を捨てること。そして、印をつけ/インデックス化して階層的に整理すること。

なぜ日本人受けするのか・・・それは、民族的に整理整頓が得意で、歴史的にも教育的にも美徳化されたことが背景にあるのかも。バリューを生み出すには、付加価値をプラスする軸とムダを除いてコストを削減する軸があるが、日本の製造業の強みは、「ムダ、ムラ、ムリ」のダラリを何度も何度も極限にまで排除しようとする執念。

それらをサポートする役割がEvernote のサービスで、売り手は買い手であるクラウド上の整理箱に会社名や商品が入っていてほしいので、販売促進/広告効果をねらって活用する可能性が高いほか、ライセンス料も無料なので、パートナーが拡大する余地大。パートナーへの補完的役割によって、個人ユーザーへの入口が拡大、利便性も増し、さらなる質の向上へ。

3) Social Memoriesの可能性

ユーザーの関心事のエッセンスがつまった整理箱をつなぎ合わせれば、Social Graph 改め「Social Memories」が生まれ、記憶と記憶をつなぎ合わせて付加価値を生み出すサービス「global platform for human memory」が誕生するかも。 Trunkによるプラットフォーム化はその第一歩。

あるいは、ユーザーの関心事のエッセンスを解析して、「こんな物が欲しかったのではないでしょうか、お客様」のような購買をレコメンドするコンシェルジュ型サービスの展開。類似系として、ALBERT社はソーシャルゲームアバターをレコメンドする解析エンジンを提供。

インターネット大潮流-VI」で触れたように、ネットビジネス究極の目的は、人々のあらゆる情報をデジタル化して、人間データベースを構築すること。その本源が、「ユーザー数に比例して価値が向上するデータベース」。とりわけ、ユーザーの関心事のエッセンスが自動的に集積され、過去の様々な記憶の組み合わせによって「知の価値」を生み出すEvernote。活用次第では面白いビジネスが展開できそうだ。

アプリのクラウド化-I

世界の4大ネット企業、今のところGoogle 以外は各分野に特化して事業を展開中。そんな中、Googleは、SNS/ Facebookに対しソーシャルゲーム等の買収を活発化する一方、マイクロソフトに対しては、Google Apps を中心にクラウド連合軍でビジネスソフト陣地になぐりこみをかけようとしている。今回はクラウド化について、規模の戦いになるサーバー分野でなく、参入障壁の低いアプリ/ソフト分野について整理を試みた。

  • Google: PageRankをテコにドキュメントを中心に「情報」を整理して価値創出
  • Facebook: Social Graphをテコに「人と人とのつながり」を整理して価値創出
  • Amazon: 「e-commerce」 の流れを円滑かつ太くすることで価値創出
  • Apple: ハードからソフトまで「entertainment の垂直統合」で価値創出

クラウド化の潮流

1) スマートフォンの進化

クラウド化以前にもホスティング/ASPなど似たサービスがあったが、決定的な違いはモバイルの進化。そのため、iPhone を中心とするスマートフォン進化の過程から振り返ると分かりやすい。
ムーアの法則により、消費電力の低いCPU開発が進んで、iPhone を中心とするスマートフォンが誕生したものの、PCに比べ「小容量+非力」という弱点は永遠に克服できない宿命にあった。そこで、手元にソフト/アプリを置いて消費していたパワーを切り離してクラウド側へ持っていき、スマートフォンはデータの高速表示にCPUを使う分業が必然的に誕生。なお、手元に置いていたソフト/アプリには、保存する場所と処理パワーが必要で、よく電力などユーティリティに例えられるので、クラウドコンピューティング = 電力 (処理パワー) + 保存容量 (データサーバー)。

2) モバイルのブロードバンド化

そうすると、スマートフォン端末とクラウドをスムーズに行き来できる橋が必要で、それがモバイルのブロードバンド化。SoftBank孫さんが宣言した「2008年はモバイルインターネット元年」が象徴的で、確かそれには3Gというより3.5Gが必要などと発言。スマートフォンクラウドコンピューティング、モバイルブロードバンドの3つが繋がったことで、ウェブ上の膨大なコンテンツにようやくモバイル端末からアクセスできるようになった。理想系は、光ファイバーをバックボーン/太い線として、無線という細い線が幾重にもとりまく「光の道」。

3) 圧倒的なコスト削減効果/ リアルタイム「ing」化

クラウド化が注目を集める源泉は、何といってもコスト削減。初期投資や維持費など社内でサーバーを個別に持った場合に比べ、コストが半分以下になったなどの事例が相次ぐ中、Twitter などリアルタイムという潮流もコスト削減効果を顕在化させている。例えば、外回りの営業マン。顧客からの問い合わせにほぼリアルタイムで対応することで、取り逃がしていた機会損失をカバー。会社に戻らなくても、営業結果を入力できたり、顧客からの急な問い合わせにもその場で資料をiPad表示できるなど。

また、全国各支店からの営業結果をコラボレーション/オンライン化して、一つのシートにほぼ同時に書き込んでもらえれば、本社での取りまとめ作業というムダも省ける。個人的には、留学中07年に数百人の学生が住所、電話番号、趣味などをスプレッドシートに同時に書き込み、リアルタイムでサクサクと書き換えられていたシーンが衝撃的だった。

4) 安全性の担保

クラウド最大の懸念はセキュリティだが、「メールの中身を見られるのでは」などGmailへのプライバシー不安が時間と共に低下したように、クラウドコンピューティングへのセキュリティ不安も静まってくるはず。世界最高峰の技術でカバーしてくれるクラウド陣営によってね。そして何より、バージョンアップ毎に殆ど使わない機能をふんだんに組み込んだ重いファイルを意図的に作り出し、パソコンの起動速度を低下させ、買い替えを促す策略ともおさらばできるのがありがたい。

クラウドコンピューティングの本質

ラジカセに比べ性能は圧倒的に劣るものの音楽を手軽に持ち運べるようにしたウォークマン、それをデジタル化したiPod。電話、メール、簡易なデータを持ち運べるようにしたi-mode、様々なアプリを持ち運べるようにしたiPhone。そして、軽量化だけでなく起動時間を1秒に短縮したiPad

音楽をListening、携帯電話を音声端末からデータ端末/ mobile computing へと変えた流れの本質は、移動/待機時間から生み出されるムダをリアルタイム化によって省く「ing」化。anywhere + anytimeの中でムダをそぎとる化学反応がクラウドの世界で起こり始めており、所有価値から「利用価値」への潮流、それがクラウドコンピューティング

ムダを省くとは」でも触れたように、コスト削減に関する至言を紹介。

  • 耶律楚材いわく、「一利を興すは一害を除くにしかず、一事を生かすは一事を減らすにしかず」・・・・一つの良いこと新しいことをやるよりは、一つの悪いこと不要になったものを取り除いていく方が効果的、という意味。
  • トヨタ生産方式の発明者 大野耐一氏いわく、「顧客の注文を受けてから現金を手にするまでの時間の流れを見て、付加価値を生まないムダを取り除くことで、その時間の流れを短縮する」・・・作業工程を改善する場合、付加価値を生みだす生産設備をいじくりがちだが、付加価値を生む行程の割合は通常、非常に小さいので、その部分を改善しても大した効果はでない。付加価値を生まないムダを排除するという、もっと大きな改善チャンスに多くの人は気づかない。

論点思考

元BCG日本代表 内田和成さんの著書より、問題解決では一つ一つ検討していくより、経験を基にした仮説から探りを入れたほうが効率的で、その訓練を日頃からせよと説く「仮説思考」に対し、今回は如何に問題を発見するかに重点をおいた「論的思考」。解決すべき問題「論点」を設定することが実はもっとも難しく、それさえ正しく設定すれば、問題解決は8割方終わったと言っても過言ではないと主張。

ドラッガーのじいちゃんいわく、「重要なことは、正しい答えを見つけることではない、正しい問いを探すことである。間違った問いに対する正しい答えほど、危険とはいえないまでも役に立たないものはない。」

論点は人や環境で動く (静的な点ではなく動的)

複数の論点があり相互に矛盾しているため、すべての論点を同時に解くことができないことも多い。例えば普天間基地問題。解くべきは「地元」の問題なのか、「沖縄全体」の問題なのか、「日本」の問題なのか。それも「生活」の問題を解くのか、「安全保障」の問題を解くのか、はたまた「アメリカ」が抱える問題を解決するのか。論点が異なれば解決策も異なってくる。すべての論点を同時に解決できる万能の解決策など存在しない。

議論の対立点: 「事実」「論理」「価値観」

議論の対立点は、「事実」「論理」「価値観」の3要素。このうち「事実」と「論理」は多くの場合、どちらかが間違っているが、「価値観」は最後まで平行線をだとる。議論で必要な事は、先ず「事実」と「論理」について白黒をつけ、その上で「価値観」を議論して、最終的にはそれぞれの「最終判断」に委ねるべき。「議論が噛み合わない」とき、殆どはこのプロセスがうまくいっていない。

視点を変える

  • 業界問題と個別問題を区別: 論点候補をリストアップし、業界全体の問題は論点ではないので除外。
  • 有意な差がない場合: 深堀はムダ。論点がズレていた可能性が高いので。
  • 視座: 二つ上のポジションにいるつもりで仕事をせよ。現実味があるので将来像も描きやすい。

論点レベルの違いを意識せよ

当初、「負債圧縮」と「営業力アップ」が論点として浮かび上がった場合、これらは直接に結びつかない。負債圧縮の上に財務体質改善、営業力アップの上にキャッシュフロー改善を考えると、営業力アップ以外に「コスト削減」でキャッシュフロー改善の打ち手も浮かび上がる。

分析とは

やたらほじくって問題を整理し、分析の海におぼれ 分析のための分析になるより、本質はここにあるのではないかと「仮説を検証するために行うもの」

筋の良し悪しを見極めるには: 優先順位 (結果重視)

時には解けない問題に出くわすときもあるので、優先順位は3つの掛け算。眼に見えて効果が表れる小さな問題から着手することで、最終的に大きな問題を解決することは多い。

  • 解決の可能性
  • 実行の容易性
  • 効果

依頼主の真意を探れ: put yourself in his shoes

  • 最終プレゼンを受けた社長いわく、「本当にいい提案をしてくれてありがとう。でも私の目の黒いうちは、この戦略はやりません」。理屈は正しい、その社長ならロジカルに考えて、実行してくれると思ったのに、その気はさらさらなかった。明らかに社長の論点を取り違えていて、我々の提案は社長が解きたい問題ではなかった。
  • 海外部門は赤字で建て直しも困難なのに、グローバルなブランドに寄与し国内販売にもプラスの影響があると頑なに信じている相手に対し、撤退すべきとの提案する場合: 相手の核心「国内販売にもプラスの影響がある」を検証するため、海外事業を投資とみなし、資金回収のため国内売上をあとどのくらい上乗せしなければならないかを算出したところ、3割りも増やさなければならないと分かったので、相手は撤退をあっさり受諾。

反対するとき人格と意見を分離

  • 「君の意見には反対だ」では人格否定された気がするので、「君のその/あの意見には反対」に緩和
  • インテル社では、your opinion と言わず、the/ that opinion とし、人格と意見を分離

課題の与え方: メンバーの力量に応じて論点レベルを使い分ける

  • a) シャチは魚か (仮説に基づいた質問)
  • b) シャチは魚か哺乳類か (二者択一で白黒つける論点-> 半分の可能性を捨てられる)
  • c) シャチは何類か (オープンな論点)
  • d) シャチはどんな生物か (ただの質問)

リーダーならばb)とc)の質問の仕方が有効。なぜなら、a)は論点を絞り込み仮説をストレートに与えているわけだが、他の論点を見落としやすく考えなくなる。d)はテーマが広すぎて収拾がつかなくなりやすい。そこで、c)「シャチは何類か」というオープンな論点を背景として説明し、b)「魚か哺乳類か調べて」と白黒論点レベルで仕事を依頼するとうまくいく。最終的には、メンバーの力量に応じて論点レベルを使い分けるのが最善策。

倫理とは

倫理とは: 「人の間」が成り立つためのルール

倫理学和辻哲郎いわく、

  • もともと世の中、世間、人界を意味する漢語「人間<じんかん>」を、日本人は「ひと」をも意味する「人間<にんげん>」として誤って使ってきた。人間とは「人の間」的な存在で、相互に何らかの関係を持った間柄的存在。あるいは、人間関係という全体性を基底にして初めて存立するのが人間。
  • 倫理というのは、特別の原理に従って「かくあるべし」というのではなく、「人の間」的存在である人間がおのずから従う行動のパターンで、「人の間」が成り立つためのルール。「人の間」も様々で、家庭、会社、コミュニティのほか、日本人、アジア人、地球人など、それぞれの「人の間」の間柄に従ってルールは異なり、複雑に絡み合う。ルールも、親子や恋人同士でしか通用しない小さなルールから、絶対に守らなければならないルールなど様々で、ルールを明文化したのが、法律や条約。
  • 「人を殺してはいけない」というのも、「人の間」のルールの一つ。ただし、ルールにも戦場のような例外があり、ルールが通用する場でのみ成り立つだけで、あらゆる場面で正当化される普遍的原理ではない。だから、普遍的な倫理は存在せず、状況に応じて成り立つ側面を持つ。
  • そういう観点で見れば、子供の成長とは 身体が大きくなるだけでなく、「人の間」のルールを身につけていくこと。