孫の二乗の兵法 改訂版-III


4. 将の心得

1) 信: 約束を破らない-> ある行動に出ることで相手の信頼を裏切らないか

  • 「巧詐は拙誠に如かず (巧みな言葉で偽って人を欺こうとするよりも、下手でも誠意を示すほうが、ずっと相手に響く) -by 韓非子

2) 義: 正しいことを行う-> 会社のために行った不正が最終的に倒産へ

  • 倫理とは『人の間』が成り立つためのルールで、親子や恋人同士でしか通用しない小さなルールから、絶対に守らなければならないルールなど、それぞれの『人の間』の間柄に従ってルールは異なり、複雑に絡み合う。普遍的な倫理は存在せず、状況に応じて成り立つ側面を持つ -by 和辻哲郎

3) 仁: 相手の立場に立って物事を考える、私利私欲に偏ってないか

  • 「動機善なりや、私心なかりしか -by 稲盛和夫
  • 「自我を確立するには他我を認めよ(agree to disagree): 創造性には個性が大事だが、その発展には他人の個性も尊重する深い思いやりが肝要- by 夏目漱石

4) 勇: 撤退する勇気、無謀の勇は必死に戦うのみ->待ち受けているのは死のみ

  • 「退却は10倍難しい (退却は勝利のための一手段) -by 孫正義
  • 「この死地に力ずくで活路をこじあけます。皆の背には常にこの王騎がついていますよ」

5) 厳: 鬼手仏心、信賞必罰、果断・果決

  • 「君主は、愛せられるより恐れられよ。ただし、恨みや憎悪だけは避け、それでいて恐れられるよう努めよ -by マキャベリー」
  • 「一生懸命に努力して、せっかく99%までの成果を上げても残りのわずか1%の「止め」がしっかりと刺されていなかったら、それは結局はじめからやらなかったと同じことになる。いや中途半端にやっただけ、むしろマイナスになる場合が多いのではあるまいか。とどめを刺さない仕事ぶりがあったら、お互いにその不徹底を大いに恥とするほどの厳しい心がけを持ちたいものである -by 松下幸之助
  • 「実を多くならせると一番木が弱る。そこでいくら惜しくても、思い切って実をまびかなければならない。これは実生活では非常に難しく、うかうかしていると花も実もダメになるうえ、木そのものが弱り枯れたり倒れたりする -by 安岡正篤

上記以外に私の好きな片言隻句:

  • 韓非子いわく、「下君は己の能を尽くし、中君は人の力を尽くし、上君は人の智を尽くす」 (自分の能力を使うのは三流で、他人の知恵を使うのが一流のリーダー)。
  • 大学いわく、「君子必ず其の独りを慎むなり」 (高い倫理観を掲げたとしても人間は弱いもの。それを克服する一つの考え方が、天が自分を常に見ているという意識をもつこと、または自分を超越した何かに畏れること、それによって自分を律すること「慎独」。)
  • 言志四録の著者 佐藤一斎いわく、「人に接するときは暖かい春の心、仕事をするときは燃える夏の心、考えるときは澄んだ秋の心、自分に向かうときは厳しい冬の心」


5. 戦術

1) 風: 戦略編の「陽」を風林火山で具体化、用兵の形とは積水を千尋の谷に切って落とすようなもの
2) 林: 戦略編の「陰」を風林火山で具体化、戦うべきと戦わざるべきとを知る者は勝つ
3) 拙: 「兵は拙速を聞く」-> 拙(つたな)くても 少々荒削りでも速戦即決、早期収束、スピード、相手に時間的余裕を与えてはダメ

  • 「前陣速攻・・・前のめりで卓球板に位置し、反射神経を頼りにとにかく攻める-> 幸福の神様らしき姿が視界に少しでも入ったら、迷わずその髪の毛をつかんで引っ張りだせ -by 石井裕 MIT教授」

4) 詭: 「兵は詭道なり (戦とは所詮、だましあい)」-> 常識をひっくり返す、戦に定石・常道はない、仮説->実行->検証、思い込みを疑え (自分のクセを客観視せよ)

  • ラグビーでゴール5m前まで攻め込むと、皆はチャンスだ、トライがとれるって思う。しかし、僕はチャンスだとは思わない。相手はピンチなので、ディフェンスに集中する。そのため簡単にはトライできない。そんな中、キックか何かで22mラインまで戻されると、あ〜あ、チャンスを逃したと思う。相手もホッとしている。そういう時こそがチャンスなんだよね、実は -by 平尾誠二
  • 個人的価値観や過去の経験に基づきすぎでは? 今の思考パターンで正しい? 二極性で発想してる? (e.g. ボトムアップ vs. トップダウン、マクロ vs. ミクロ、コスト削減 vs. WTPアップ)
  • 市場だと思っていないところも観てる? バリューチェーンを広げてみては?

5) 逃: 「36計逃ぐるに如かず」-> 一度引いて態勢を整える勇気、戦いを避けるのが最善

  • 持続可能な勝ち方 = 「戦わずして勝つ > 短期戦で勝つ > 戦わない > 長期戦で勝つ > 短期戦で負ける > 長期戦で負ける」
  • 「どんな戦上手でも、不敗の態勢を固めることはできるが、必勝の条件までつくりだすことができない (負けないはコントロールできるが、勝ちはコントロールできず敵次第)- 軍形編」

オリジナル 「孫の二乗の兵法」

理念

  • 道: 理念
  • 天: 情報ビッグバン
  • 地: 情報革命はアジアから
  • 将: 優れた将
  • 法: 方法、システム

ビジョン

  • 頂: ビジョン
  • 情: 情報
  • 略: 戦略、省略
  • 七: 勝率7割で勝負
  • 闘: 事を成す

戦略

  • 一: 圧倒的No.1
  • 流: 流れに逆らわない
  • 攻: 複数の打ち手
  • 守: キャッシュフロー経営
  • 群: マルチブランド

将の心得

  • 智: 知力
  • 信: 信義、信用、信念
  • 仁: 仁愛
  • 勇: 勇気
  • 厳: 時には鬼となる

戦術

  • 風: 素早さ
  • 林: 水面下での行動
  • 火: 徹底した行動
  • 山: 動かないこと
  • 海: 平和にすること