長期的視点の本質

前回の「大局観」に続き、このブログの切り口であり目の付け所でもある「長期的視点」。今回はその本質について、一流の目線を紹介。長期的視点とは・・・

  • 古田敦也 名捕手いわく、「例えば松井選手のような打者には、外角低めなど長打されないコースに投げたい。でも、強打者ほどその辺の嗅覚が優れていて、『このピッチャーならこのへんしか投げれんやろ』とすぐ嗅ぎ当てる。そうなると、そのピッチャーは絶対勝てない。だから、たとえ二流の投手でも一流の打者に勝とうと思ったら、打たれてもいいからベースいっぱい使って投げないといけない。時には相手のホームランコースにも飛び込み、相手を混乱させなければいけない。だだ、飛び込むにもコツがある。ホームランを打たれても構わない場面で、わざと投げる。そうすると、5割くらいの確率で打たれる。一方、絶対に点をやれない場面では、別の球を投げはずす。いざという時に打者の裏をかいてホームランを打たれないようにするには、普段からそういうことを仕掛けておかねばならない。一回負けたら終わりというトーナメント制なら怖くてできないけど、年間140試合でトータル何勝できるかというペナントレースでは、仮に3割以上打たれても肝心なところでは打たれなかったらOKとか、長期的視点で勝負を仕掛けないと勝てない。」
  • イチロー選手いわく、「決め球を打っていくことは難しいけど、打てなくてもその姿勢を見せることは、相手を考えさせることにつながる。打てれば相手は、コイツは何を考えているんだろうとパニックになる。長いペナントレースでの戦いにおいて、決め球を打つことは大事。」
  • 名将 森祇晶 元西武監督いわく、「人生の基本は1勝1敗。これにいくつの勝ちを上乗せできるか、どうプラスアルファをつけるかで本当の勝負は決まる。私の野球観の基本は、2勝1敗。西武がぶっちぎりで優勝したときですら、81勝45敗4分の勝率0.643。7割・8割を目指すと高望み過ぎ、ほどほどでいいと気を抜けばすぐに4割台へ。3連敗したら4連勝で取り返せとゲキを飛ばすより、2勝1敗のペースでいこうと考える。仮に戦力を集中して6連戦全てに勝っても、無理がたたって2勝4敗ということになれば同じこと。ムダ・ムラ・ムリのダラリをなくし、ブレを少なくする。勝ったり負けたりを繰り返して、最後に勝ちが負けを上回っていればいい。いや、上回るようにあらかじめ計算しておいて、目先の負けにこだわらない。マラソンランナーが、少し高めにペースを設定して、それを守りながら走るのに近いかもしれない。少し高めの目標設定を自分に課し、トータルで目標に近いところにいればそれで良しとする生き方の方が、遠くまで行けるのではないか。負けを織り込んでもペースを守り抜く。肝心なのは勝利よりも勝率、勝率とは負けを織り込むこと。ムリをしてまで達成しなければならない目標は、目標ではなく欲、それも大欲の部類。」
  • 名伯楽 藤澤和雄 調教師いわく、「欲張りだから勝ちたいのは世界一勝ちたい。しかし、その場しのぎばかりでは、永遠に変わらない。ただ勝つことに意味はない。一勝よりも一生! ひとつ勝つことよりも一生続ける」・・・その至言の背景には、将来のダービー馬と期待された若き有力馬の安楽死がある。若かりしころ、まだ有力馬がほとんどいない藤澤さんのもとに、「ヤマトダマシイ」という良血の有力馬がやってきた。デビュー戦は圧勝。スポーツ紙にも異例のダービー候補と記事が出るほど注目を集めており、藤澤さんもダービーで行けるとスケジュールを組んだ。しかし、次のレース中にヤマトダマシイは骨折。手術をしても助かる見込みがないと安楽死処分へ。
  • 石井裕 MIT教授いわく、「私はよく『2200年』という未来を軸にしてモノを考える。『2200年』に生きている人類に、私たちは何を残すのか、どう思い出されたいのか。そこまで考えると、本質的なことをやらなければならないことに、誰もが気づくはず。一過性の、すぐに廃れてしまうようなものばかり作ってもしょうがないのです。」
  • マキャベリいわく、「両者のうちどちらかが欠けざるを得ない場合には、愛されるよりも恐れられる方がはるかに安全である」。短期的にはとても有効な恐怖政治だが、歴史でみても長期的にはかなり高い確率で破綻する。そういう意味で、短期思考の逆説的戒め とも解釈。
  • 50歳を超えたチンギス・ハンが20代の若者に一目ぼれ、後に宰相となった耶律楚材(ヤリツソザイ)いわく、「一利を興すは一害を除くにしかず、一事を生かすは一事を減らすにしかず」。一つの良いこと新しいことをやるよりは、一つの悪いこと不要になったものを取り除いていく方が効果的、という意味。その際、剪定と同じように、理想的・長期的な姿をイメージしたうえで木の生長にとって大切な肝となるところまでも切り取ってはいけないよ、長期的視点から陰陽のバランスをとりなさい、という意味。
  • 二宮金次郎いわく、「(丸い風呂に入りながら村人に教えた場面) 自分の利益ばかり考えている者は、風呂のお湯を、しきりと手前へかき寄せているのと同じ。一時は自分の方へお湯が寄ってくるが、すぐに脇をすり抜けて向こう側へ流れていってしまう。結局、自分も恵まれることがない。これと反対に、常に相手のためを思い、自分の持っているものを与えようとする人は、お湯を向こう側へ押しやるのと同じだ。そのお湯は向こうへ行くように見えるが、実際には、ぐるっと回って自分の方へ返ってくる。相手も喜び、自分も恵まれることになる。自分さえよければいいという我利我利の心を捨てて、自利利他の心を持ちなさい。」