論点思考

元BCG日本代表 内田和成さんの著書より、問題解決では一つ一つ検討していくより、経験を基にした仮説から探りを入れたほうが効率的で、その訓練を日頃からせよと説く「仮説思考」に対し、今回は如何に問題を発見するかに重点をおいた「論的思考」。解決すべき問題「論点」を設定することが実はもっとも難しく、それさえ正しく設定すれば、問題解決は8割方終わったと言っても過言ではないと主張。

ドラッガーのじいちゃんいわく、「重要なことは、正しい答えを見つけることではない、正しい問いを探すことである。間違った問いに対する正しい答えほど、危険とはいえないまでも役に立たないものはない。」

論点は人や環境で動く (静的な点ではなく動的)

複数の論点があり相互に矛盾しているため、すべての論点を同時に解くことができないことも多い。例えば普天間基地問題。解くべきは「地元」の問題なのか、「沖縄全体」の問題なのか、「日本」の問題なのか。それも「生活」の問題を解くのか、「安全保障」の問題を解くのか、はたまた「アメリカ」が抱える問題を解決するのか。論点が異なれば解決策も異なってくる。すべての論点を同時に解決できる万能の解決策など存在しない。

議論の対立点: 「事実」「論理」「価値観」

議論の対立点は、「事実」「論理」「価値観」の3要素。このうち「事実」と「論理」は多くの場合、どちらかが間違っているが、「価値観」は最後まで平行線をだとる。議論で必要な事は、先ず「事実」と「論理」について白黒をつけ、その上で「価値観」を議論して、最終的にはそれぞれの「最終判断」に委ねるべき。「議論が噛み合わない」とき、殆どはこのプロセスがうまくいっていない。

視点を変える

  • 業界問題と個別問題を区別: 論点候補をリストアップし、業界全体の問題は論点ではないので除外。
  • 有意な差がない場合: 深堀はムダ。論点がズレていた可能性が高いので。
  • 視座: 二つ上のポジションにいるつもりで仕事をせよ。現実味があるので将来像も描きやすい。

論点レベルの違いを意識せよ

当初、「負債圧縮」と「営業力アップ」が論点として浮かび上がった場合、これらは直接に結びつかない。負債圧縮の上に財務体質改善、営業力アップの上にキャッシュフロー改善を考えると、営業力アップ以外に「コスト削減」でキャッシュフロー改善の打ち手も浮かび上がる。

分析とは

やたらほじくって問題を整理し、分析の海におぼれ 分析のための分析になるより、本質はここにあるのではないかと「仮説を検証するために行うもの」

筋の良し悪しを見極めるには: 優先順位 (結果重視)

時には解けない問題に出くわすときもあるので、優先順位は3つの掛け算。眼に見えて効果が表れる小さな問題から着手することで、最終的に大きな問題を解決することは多い。

  • 解決の可能性
  • 実行の容易性
  • 効果

依頼主の真意を探れ: put yourself in his shoes

  • 最終プレゼンを受けた社長いわく、「本当にいい提案をしてくれてありがとう。でも私の目の黒いうちは、この戦略はやりません」。理屈は正しい、その社長ならロジカルに考えて、実行してくれると思ったのに、その気はさらさらなかった。明らかに社長の論点を取り違えていて、我々の提案は社長が解きたい問題ではなかった。
  • 海外部門は赤字で建て直しも困難なのに、グローバルなブランドに寄与し国内販売にもプラスの影響があると頑なに信じている相手に対し、撤退すべきとの提案する場合: 相手の核心「国内販売にもプラスの影響がある」を検証するため、海外事業を投資とみなし、資金回収のため国内売上をあとどのくらい上乗せしなければならないかを算出したところ、3割りも増やさなければならないと分かったので、相手は撤退をあっさり受諾。

反対するとき人格と意見を分離

  • 「君の意見には反対だ」では人格否定された気がするので、「君のその/あの意見には反対」に緩和
  • インテル社では、your opinion と言わず、the/ that opinion とし、人格と意見を分離

課題の与え方: メンバーの力量に応じて論点レベルを使い分ける

  • a) シャチは魚か (仮説に基づいた質問)
  • b) シャチは魚か哺乳類か (二者択一で白黒つける論点-> 半分の可能性を捨てられる)
  • c) シャチは何類か (オープンな論点)
  • d) シャチはどんな生物か (ただの質問)

リーダーならばb)とc)の質問の仕方が有効。なぜなら、a)は論点を絞り込み仮説をストレートに与えているわけだが、他の論点を見落としやすく考えなくなる。d)はテーマが広すぎて収拾がつかなくなりやすい。そこで、c)「シャチは何類か」というオープンな論点を背景として説明し、b)「魚か哺乳類か調べて」と白黒論点レベルで仕事を依頼するとうまくいく。最終的には、メンバーの力量に応じて論点レベルを使い分けるのが最善策。