スランプ克服・脱出-I

スランプとは

運動、勉強、仕事などの作業とは、見る・聞く・感じるなど感覚系学習によって得た入力情報を、手足・言葉・文章など運動系学習によってうまく出力できるかどうか、「インプットとアウトプット」の関係。これら入力・出力のうまい人々が、いわゆる「できる」グループ。その中でも、多くの情報をインデックス化して効率的に取り込み、指示通りミスせず瞬時に引き出せ、入出力のバランス感覚が優れた人ほど、一流の域に近づく。

スランプも含めうまくいかない状態とは、インプットからアウトプットへの流れがどこかで目詰まりしていること。スランプ克服法は、概ね以下の4つ。森祇晶 元西武監督いわく、「一流選手になるほど、チームに対する責任や自分自身のプライドも加わり、スランプに陥りやすい。スランプがあるというのが一流の証明」。今回は、一流どころのスランプ克服法を抜粋・・・

  • 基礎技能をチェック: 筋力、基礎知識
  • 基本に戻れ: 素振り、理想の感覚を取り戻せ
  • 気力を向上: やる気を高める、ライバル心
  • アドバイスを求める: 先輩、理論書、他分野

凡打から学ぶ: イチロー選手「状態の平均を修正の基準に、微妙な変化を察知、早めに修正」

今までより、自分が打てると感じる球が増えてしまった。大リーグに入って最初の2年間なら見逃していた球を、体が打ちにいこうとする。頭ではヒットにするのが難しいと感じる球でも、体では打てると感じるわけ。それで凡打を重ねる。メジャーの投手に慣れてきたゆえに、頭ではなく本能がボールをとらえられると判断してしまう。スランプというより、自分の打撃が進化したゆえの反動。

そんな折、一塁へのファールフライという凡打のスイングが参考になり、自分の理想とするスイングとのズレを修正できるようになった。どうしていい当たりが出たのか考えると、分からずパニックになる可能性があるので、逆にどうして凡打になったのか、その原因を取り除き修正したほうが自分には向いていて、その方が長続きするのではないか。毎年、気持ちは変わるし、体も微妙に変わる。いいフォームが何年たってもいいとは思わない。その時々の自分に合うフォームが必ずあるはず。だから、一球ごとに微妙にフォームを微調整している。自分の場合、打ちに行こうとする積極性が強いので、打ってはいけない球を我慢する能力を身につけることが当面の課題。

苦しいときにベストの状態を思い出すと、理想的な状態と現実との大きなギャップを感じて余計に苦しくなる。だから、良くも悪くもない中間を修正の参考にした。バットの状態が常に完璧でないといけないような選手は、この世界では長くやっていけない。外的要因によるそれなりの誤差に対応できる技術を備えるべき。

松井秀喜選手いわく、「イチローさんの凄さを感じるのは、自分自身の正体をしっかり把握していること。自分がここまでできる、これはできないということがきっちり分かっている」。本人いわく、「自分のチェックポイントをいくつも持って、それぞれがどういう状態にあるかをしっかりとつかむこと。」

ベストな状態を基準にすると、そこからいったん外れた場合、より多くの修正が必要で時間もかかる。だから、状態の平均を修正の基準にすえて、日頃から修正幅をできるだけ小さく保ち、調子のブレを少なくすること。いわゆる平準化。それには、結果が出ていればあまり気にしない微妙な違和感やズレを、松井秀喜選手が認める研ぎ澄まされた客観力と、木製バットを乾燥剤入りのバッグに包み微妙な湿気をもコントロールする規則的な日常管理で、上半身の固さなど微妙な変化を察知し、早めに修正できるから、長期スランプが少ないのかも。

不動心: 松井秀喜選手「日頃から自分の根幹部分を強固にしておく」

イチローさんは「吐き気を催すことがある」といっていたが、僕は精神的にそこまで追い詰められたことはない。状態が良いからといって結果が出るとは限らないし、逆に悪いからといって打てないとも限らない。野球とは、そういうものと割り切っている。
いつも心がけているのは、打撃に対する自分のアプローチを変えないこと。悪い部分は修正していくけど、根本的な考え方や取り組みは決して変えない。結果が出ないからといって基本的な部分まで変えてしまうと、収集がつかなくなる。
細かい部分を変えたり、修正したりしていくうちに、僕の場合、ボールの見え方が多少しっかりと引き込めるように見えてくる。同じ球でも、0.00何秒かと長く見えているような感覚になる。長く見れることで余裕が生まれ、その分しっかり振れる。イチローさんは、「あの打席のファーストフライがきっかけだった」、ということがあるそうだけど、僕はそこまで感じられない。
スランプになったときにどう対処するかではなく、まずスランプに陥らないために、できる限りの準備をしようと考えている。たとえスランプになったときでも、思考やスタンスがブレないように、日頃から自分の根幹部分を強固にしておく、鍛えておくことが大事。