老害を防ぐ「いぶし銀の叡智」

生きがい・働きがいに関連して、事業成功者が陥りやすいワナのひとつ、老害。それは、ある種の自己実現の変形。事業と趣味が混同して起こる悲劇ともいえる。心理学の視点から、老害を防ぐ「いぶし銀の叡智」を紹介。

老害とは

心理学的に見ると、幼い頃からの夢、または自分の内界に秘めた欲求・自我を追い求めて、事業と同一視する、ある種の自己実現の変形。なすこと全てがうまくいき、事業に対して外へ外へと流れていた心的エネルギーが、ある頂点に達した時に、内界に向かって逆流し始め、内的意義の高い趣味を外的な意義と混同して事業化。うまくいかないとなおさら拡大しようとする悪循環に陥り、破滅を迎える。

いぶし銀の叡智

グリム童話いわく、「神はロバに30歳の寿命を与えたが、苦役に苦しむ生涯の長い道のりを嫌うので、18年分短くしてやった。犬も猿も30歳は長すぎるというので、それぞれ12年、10年分短くしてやった。しかし、人間は30歳では短すぎると残念がるので、神はロバ、犬、猿から取った年齢分、18+12+10を追加して、70歳の寿命を与えた。」

見せかけの上昇が止まる時、60歳以降の猿の年になっても、人は30歳の生活に固執したがる。しかし、人生の後半においては、「下がることによって仕事をまっとうする」逆説を生きねばならない。この時は、何も年齢とは限らない。いつ訪れるかも分からない。事業と趣味との線引き、外界と内界との境目、自己を徹見し客観視する目、時を見極める洞察力、これら「いぶし銀の叡智」を人生の後半に向け今から磨く必要がある。