ZONE の世界-I

艱難辛苦という試練を乗り越えるには」に関連して、今回は例え話としても分かりやすいスポーツ界の話題。「神の肉体 清水宏保」を中心に、超一流アスリートたちの極限の世界、幸福感「ZONE」と壮絶な練習「筋肉破壊トレーニング」を紹介。そして最後に、ビジネス界への応用といった構成。

ZONE の世界とは: 今までに味わったことのない幸福感、エクスタシーに包まれた世界

98年にスピードスケート500mで世界新をマークした清水宏保 選手いわく、「滑るべき光のラインが見えた。」 加えて、アイルトン・セナの「神を見た」、カール・ルイスの「光に包まれた」のほか、

  • 野球: ピッチャーの球が止まって見え、勝手に体が動きヒットを連発した
  • サッカー: 周りがいつもより広く見え、スローで見えた
  • バレー: 自分がコートに立っている姿を遠くから見ているような感覚
  • 洋弓: 周りの景色や音を感じなくなり、その場所に自分ひとりしかいないという感覚

アスリートたちの証言を基に分類すると、

  • 距離・時間軸のズレ
  • スローモーション現象の出現
  • 過去の情報のフラッシュバック
  • 俯瞰(ふかん)体験
  • 周囲や自然との一体感
  • 人生のパノラマ回帰
  • 試合の支配感

アスリートたちのこういう摩訶不思議な体験が、「未知なる領域=ZONE」とよばれ、「アスリートが自分の潜在能力を引き出し、ピークパフォーマンスを発揮できる精神領域」のことを指す。このZONEに入り込んだアスリートたちが口々にするのが、「今までに味わったことのない幸福感、エクスタシーに包まれた。」

ZONE の実態

脳医学の見地から解明されたそのナゾとは・・・人間の脳には生命誕生の頃からの情報がDNAに組み込まれているが、視床という脳の安定装置が働いているため、通常は開くことがない。しかし、能力の限界を超えたり、脳への酸素供給が絶たれると、ドーパミンが放出され、安定化装置が狂い出す。その結果、過去の情報が前頭葉に漏れ出し、トランス体験を味わったり、生命誕生の光の世界にまでフラッシュバックするという。一方、エクスタシーを感じるのは、極限状態になると肉体・精神 共に苦痛を感じるが、それを鎮めるために脳内麻痺の作用をするエンドルフィンが放出され、ドーパミンの興奮とエンドルフィンの快感が相まって作用するとのこと。

苦行の後に訪れる「悟り」、死の瀬戸際における「臨死体験」のほか、飯田助教授の生きがいシリーズで紹介した「ママに会うために生まれてきたんだよ」、「私、お母さんのところに生まれるって知っていたから・・・」なども、このような脳のメカニズムで引き起こされる摩訶不思議な現象なのかも。