大企業病-なぜ経営陣は機能しないのか?

彼らの多くがたどってきたエリートコース、「権限は大きいが責任は小さい」、この神秘の中に答えがある。

調整上手な「官僚型」

企画、財務、人事、秘書などスタッフ部門が長く、若いころからトップに近いところで仕事をし、いつのまにか「エース」と呼ばれる。かつてのMOF担が典型。特徴は、理解・分析力、監督官庁との交渉力、「足して2で割る」的な調整能力。企業の成長が安定的期に入る頃からこのタイプが出現、カルテル体制下でもっとも能力を発揮。企業のトップから見ると、社内全体のことをよく知っていて、安定感があり、信頼が置ける人材。

優越意識強い「花形部門型」

特定の事業部門が長い間実権をにぎり、概ねその部門からトップを輩出。製造業に多く、販売やサービス業、メデイア業界などでも散見。特徴は、特定部門に精通した専門性、「会社を支えているのは我々だ」という自尊心、他部門への優越感やライバル意識。

一族経営に多い「ファミリー型」

創業者や中興の祖の一族が若いうちから次期社長と目され、帝王学を叩き込まれる場合が典型。効率的に経営学を修得できるので、経営者としての素質があれば若くして能力を発揮できるが、有能な番頭とセットの場合も多い。

共通点

  • 過保護: 失敗の危険がなく、有能な部下も装備→修羅場の実体験なく能力・感度が低下
  • 歪んだエリート意識: 危機意識の低下・うぬぼれを助長→環境の変化に対応できず
  • 同一性: 異質な抵抗勢力や新興勢力を排除→有能な人材の喪失+社員の同一性


一見、輝かしいコースのように見えるが、実は将来の経営者を大事に育てんがため、足をふみはずさないよう有能なとりまきをつけたり、難問が山積しているポストはあえて避けるなど「手心」が加えられており、甘やかされているうちに能力・感度が低下、修羅場の実体験がないため逆境への対処法を学び損ねる。潜在的に歪んだエリート意識を持つ花形部門型エリートは、無意識のうちに出身部門に肩入れし、新興ビジネスの芽を摘み取ることが多く、邦銀花形の融資部門が80年代以降に欧米大手銀行で主流となった投資銀行業務や金融工学を黙殺。守りに強い官僚型エリートも、環境変化に対応できず、「酒屋からスーパーへ」「飲み屋でのビールのブランド化」という流通・消費者革命の流れをつかみきれなかったキリンビールが好例。

同一性を好みがちなエリートは、社内の人事権を掌握し、抵抗勢力や新興勢力を排除、若い世代にまで主流派志向が根付き、価値観が均一化。改革派の敗北を見た有能な若い人材も見切りをつけて転職するので、チェック機能が麻痺。