CIRQUE DU SOLEIL II

その他の特徴

1) キャッシュフロー経営: 前売りチケット制
前売りチケット制なので、手元に現金を確保でき、次のショー開発や人材獲得に振り向けられる。新たなショー開発のたびに必要な資金調達のわずらわしさから解放され、コンテンツ開発に注力。Dell モデルと類似。

2) パートナー戦略: 補完者
大掛かりな投資リスク、劇場の建設コストの大半は提携相手が負担。私が観たラスベガスの常設ショー「Ka」は、ホテル側のMGMグランドが、1.4億ドルを負担。日本でも、「シルク・ドゥ・ソレイユシアター東京」の建設費は、オリエンタルランドと共同で140億円。ショーが成功を収めると、ホテル側も数年で建設費用を回収できる。補完者を巻き込みWin-winを構築。なお、シルクのパートナー戦略のきっかけを作ったのは、1992年に初パートナーとなったフジテレビ。

Blue Ocean Strategy活用法

戦略キャンバス

Southwest の事例もよく取り上げられるが、これほどうまく本質を表現した図は見たことがない。それは、切り口の選び方が、産業や企業に縛られるのではなく、戦略的打ち手となる本質=競争要因をうまく抽出しているため。戦略キャンバスを使えば、差別化に注力しているはずの他の航空会社が「あれもこれもの総花型」、Southwestは、親しみやすいサービス、スピード、二地点間の頻繁な便数の3つだけに注力、他は取り除くか減らすことで、自動車と同水準の価格を達成する「あれかこれかのメリハリ型」ということが一目瞭然。問題を視覚化することで、数字や言葉を用いたどのような議論より本質をえぐり、通訳のいらない素直なメッセージを伝えることができる。

Four-action framework

メリハリのある新しい価値曲線を描くための4つの要素、「取り除く」「減らす」「増やす」「付け加える」。そのためには視野を下記分野にまで広げ、顧客間の違いではなく買い手が「共通して重んじる要素」でフィルターをかけ、顧客価値を増大させる要因を多角的に本質をえぐる必要あり。

  • 代替産業: 同じ目的のために使う製品・サービス (余暇の過ごし方: 食事、映画、スポーツ、マッサージ、ドライブ、読書)
  • 業界内の他のグループ: 質と価格の違うグループの融合 (従来型のフィットネスクラブと家庭向けエクササイズを融合、高級感のある値ごろな車)
  • 買い手グループ: 影響者・購入者vs. 利用者 (医師から患者重視、IT担当者からトレーダーやアナリスト、法人から個人へ)
  • 補完財: 互いに補完しあってバリューを生み出す財 (総合コスト=初期費+維持費+処分費、ヤカン業界と水、本屋と店内カフェ、紙バック取替え不要のダイソン掃除機)
  • 機能思考vs. 感性思考: 感性->機能 (1000円ヘアカット、オンライン保険・証券)、機能->感性 (スターバックス)
  • トレンド: 合法的かつ聴きたい曲だけをダウンロードできる仕組みをつくったApple

判断力

結果論で眺めると合点がいくものの、実際は不確実な中、様々な要素の中から顧客価値を増大させる共通要因を抽出し、「取り除く」「減らす」「増やす」「付け加える」を決定するのは容易でない。最終的には、羽生義治さんの著書「決断力」でふれた大局・多面・長期的視点と優先順位とタイミング次第、個々人の能力と運次第ということ。ブルー・オーシャンを見抜く眼力が持てるよう精進せよということ。