CIRQUE DU SOLEIL III

キャリア形成: メリハリ型 vs. 総花型

ビジネスの本質をうまくとらえた価値曲線、ここではメリハリ型と総花型を人材価値に当てはめ、キャリア形成の指針となるよう視覚化を試みた。

ビジネスリーダーのキャリアタイプ

whatを考えるのがトップ、howを考えるのがミドル以下といわれるが、「ビジネスリーダー」に限定し専門志向性と組織志向性の違いで分類したのが下図。大きく4タイプに分かれる中、私のタイプはEntrepreneur。

三次元能力分類

次に能力に関し、x軸に広がり、y軸に深さをとって分類したのが下図。General Manager/ Entrepreneurに要求されるのは「T」字型、Specialist/ Professionalは「t」字型。一方、x軸だけを伸ばすと何も強みがないゼネラリストの典型「一」字型、y軸だけを極めると職人の典型「I」字型。概ねメリハリ型は「T」「t」「I」字型、総花型は「一」字型といったところ。

打って、守って、走る、走攻守が要求されるプロ野球に当てはめると、

  • 「t」字型: 多くはこのタイプに分類、打者としては一軍だが走塁・守備は二軍以下
  • 「T」字型: 高い打率を維持しつつも走塁・守備も優れたイチロー、3割・30本・30盗塁を達成した秋山(SoftBank監督)
  • 「I」字型: バントの名手、左打者キラーのワンストップ抑え、勝負強さが身上の代打の切札
  • 「一」字型: 短命なプロ生命(神様・仏様・稲尾様いわく、速球・変化球・制球力すべてがマズマズでは高校野球ではトップクラスでも、プロでは通用しない)

代わりがいくらでもいるチームプレイでは、極端なメリハリ型「I」字型でも戦力外通告を受けることはないが、代替者がいない個人プレーのゴルフ・テニスでは、パットの名手、ショットの名手というだけでは生き残れない。逆にすべてをマズマズにまとめられる総花型プレイヤーは、安定性が一流の域に達することで、優勝することもあるし、予選突破率やシード権獲得の可能性も高まる。他にも減点主義の下、安定性が求められる平時のリーダーとして、官僚組織では総花型が出世する。職種によっては、輝けるチャンスがある。

自己目標

ただ殆どのビジネスは、個人の総合力を競うゲームではなく、チーム力を競う戦い。教育に時間とお金をかけるより、即戦力を集めた方が効果的なので、野球選手のように「t」字型の専門求人が多い。しかし個人的には昔から、鉄棒や吊り輪など個別種目の金メダリストより個人総合でのメダリスト、平泳ぎのメダリストより個人メドレー(バタフライ→背泳ぎ→平泳ぎ→自由形)のメダリスト、走攻守そろったイチローや3割・30本・30盗塁を達成した秋山のような選手、そして究極的には鳥人セルゲイ・ブブカなど、何をやらせても一流選手になっていただろうと思わせる運動神経の持ち主が、キング・オブ・アスリートだと思っている。そのため、メリハリ型の中でも「T」字型が理想像。とりわけ人材が不足がちのスタートアップでは、「何でも屋」が珍重される。

今後は「T」字型の土台を固め、z軸方向に実績を重ね、権力の源泉で示した下図の要素を積み上げ、人材価値を高めていかなければならない。ビジネススクールも2年目になると弛みがちになるが、羽生義治さんの言葉と修身教授録「一日は一生の縮図なり」を念頭において、精進せねばと再認識させられた。

敢えて相手の得意な戦型に挑戦-羽生義治
「オールラウンドプレーヤーでありたい」という棋士としての目標。そのためにも「自分の得意な形に逃げない」ということを心がけている。経験が殆どない型を試すと、撃沈されることが多いが、それはそれで仕方ない。先行投資のために授業料を払っているのだから。大切なのは、自分らしさを保っているかどうか