コミュニケーション「聴く力・伝える力」-I

ネアンデルタール人が滅び、ホモ・サピエンス(クロマニヨン人)が生き残った主要因が、言語を操る能力差。自らの知識と経験を他者と共有することができるようになり、生涯をかけて獲得した知識も子孫へ伝えることが可能になった。
コミュニケーションは聴いて伝える会話のキャッチボール。今回は、それぞれについて本質に迫った。まず聴く力から。

1) 聴く吸引力: 大前提「相手のことは分からない」-> 分からないから教えて、聞かせてという受動的態度

相手の話を聞く達人に坊さんがいる。直接話したことはないが、テレビで対談などを見ると相手が自然と吸い込まれ、何でも話してしまうブラックホールのような吸引力がある。その吸引力の正体が「慈悲」。その大前提が、「相手のことは分からない」ということ。

だから分かろうとする、想像する、全部分からなくても何かは分かるだろう、分かりたいと思うこと。そこに慈悲の核心がある。あなたのことは全部分かっているという能動的な言い方や態度だと、愛情はあるかもしれないが、どうしても教えてやろうとか、あつかましさが残る。だから相手は心を開かない。逆に分からないから教えて、聞かせてという受動的態度だと、相手は心を開く。

  • 禅僧 南直哉いわく、「分からない」ということが、理解しようとする基本でしょ。

2) 伝える力

グロービズの堀学長に、リーダーシップで最も難しいのは何かと直接聞いたところ、答えは「コミュニケーション」で、克服法は場数を踏むしかないとのこと。コミュニケーションは、相手に伝えるだけでなく、共有されなければ無意味。英語では下記のような例えがあり、受け手が納得して行動しようと思ってもらえるレベルに到達して初めて意思が共有される。
つまり、主語は送り手ではなく「受け手」で、彼らがいかに受け止めるか。あるいは、相手の求めているものを「読み取る力」、「感じ取る力」。

  • Said ≠ Heard
  • Heard ≠ Listened
  • Listened ≠ Understood
  • Understood ≠ Agreed
  • Agreed ≠ Convinced

そして、もう一つの難解な点が会話の行間に含まれる感情的次元の会話、言外の解釈の相違。例えば、コンサルタントが顧客に改善を求めアドバイスをする場合、同じ言葉でも受け手からすれば、「私はあなたが嫌いだ。間違ったことをしたあなたに賛同できない」という場合と、「私はあなたが好きだ。あなたに成功して欲しいから、改善点を提言している」という場合。受け手の捉え方次第で、正反対の意味に解釈される可能性がある。感情的メッセージは誤解を生みやすいので、発信者はストレートに「成功して欲しいから・・・」と伝える一方、受け手がメッセージをどう受け取ったか、同席者に聞いたり、直接受け手に確認してみるのがいい。