Mobile Internetの今後

長々とした5回シリーズも今回が最後。いやしモードが必要な方はこちら: http://pocky.jp/cm/pocky_radio/index.html <- 「もっともらしいこと」篇

2008年はインターネットマシーン元年

08年2月の決算発表会でSoftBank 孫さんが発した「2008年はインターネットマシーン元年」。インターネット接続がPCからケータイへ、携帯電話はボイスマシーンからインターネットマシーンへの流れを読み、2008年がその潮目になるとの認識を示した発言。背景には、ケータイがインターネットマシーンになる上での3大障壁、スクリーン (ワイド画面の普及)、アクセススピード (3G普及率80%と世界一)、内部処理能力 (CPUの向上)、が最低水準を突破したことにある。実際、mixi のページビュー数はケータイ経由が60%を超えた。

3G普及率80%を誇る世界最高水準の携帯市場 日本で、世界中が注目するMobile Internet の実験が行われようとしているが、残された大問題がプラットフォーム。共通基盤がなく、まったく違う「土地」に建物を建てているということ。DoCoMo, au, SoftBank などの通信キャリアは、各社ごとに独自仕様で構築され互換性がないうえ、同じ携帯メーカーでも端末が異なると、別のアプリケーションが必要になるほど。ソフト開発者は、その組合せごとにソフトを書き換えなければならないというなんともおかしな世界。

世界標準からかけ離れたNEC98シリーズの末路

84年にIBMが発売したPC/AT互換機 (Personal Computer/Advanced Technology) は、内部仕様の多くが公開されたため互換製品が各社から発売され、事実上の世界標準となり、規模の経済でコスト優位性も確保した。

一方、国内では日本語入力という参入障壁によりPC/AT互換機とは異なる規格で、NEC富士通などが独自路線を突き進むことができた。しかし、改良されたWindows3.1により参入障壁が低くなるとと、統一規格に沿った部品が世界的に流通し、コスト面でも有利なPC/AT互換機が国内でもシェアを拡大。NECとの競争に敗れすでに独自路線を捨てていた日本の電機メーカーも、PC/AT互換機を投入し始めた。最盛期には「国民機」と言われるほどの圧倒的シェアを誇ったNECは、過去の機種との互換性のため独自設計を捨てられないジレンマに陥り、世界標準からますますかけ離れていく。最終的には97年に白旗を揚げ降参、独自設計路線を完全に捨て去り、PC/AT互換機陣営に組した。

同様のことが半導体市場でも見られた。80年代に世界の半導体市場を支配した日本メーカー。各社が独自の開発技術を競った結果,規格の違いが提携を阻害させ、90年代に人件費などで製造コストが安い韓国や台湾のメーカーに負け,先端技術では IBMIntel に差を広げられた。日本の携帯業界の皆さん、歴史は繰り返すのです。

プラットフォーム競争

GoogleMicrosoftを中心に、プラットフォーム競争が繰り広げられているが、プラットフォーム形成において重要な役割を担うエンジニアから支持を受けているのが、AppleiPhone で、彼らの心境は以下のような感じ。実際、iPhone SDKは、累計ダウンロード数が20万件以上、「フォーチュン500企業の1/3」が新iPhoneの企業向け機能に関心を示しているほど。

  • Windows: ありえない。
  • Google: いや、もうそろそろ飽きたな。
  • iPhone: お〜、可能性感じるよ。

Googleはネットワークを押さえず、ウェブをオープンにしてモバイルの世界も支配しようと試みている。インフラを持たない分、資金力に勝り、開発力を持っているだけに、その流れが出来てしまうとユーザは、キャリアや端末を問わずワンサービスを利用できるようになる。

そんな中、SoftBank 孫さんがあみ出した奇策が、顧客数世界一のChina Mobile (中国移動) と売上げ世界一のVodafoneグループとの提携。SoftBank の加入者は1,900万だが、3社連合では35倍の7億。加入者数を錦の御旗として掲げ、「既存のあらゆるOSを取り込んだプラットフォームをその上につくり、共通のコンテンツが動き、共通の方法で課金できる」、そんなルール作りを主導するのが狙い。そのプラットフォームでは、Windows MobileGoogleのAndoroid、Symbian OSLinuxなど、どんなOSでも動く世界。0.2億人の世界から7億人の世界にワープすることで、ビジネスモデルの発想を根底から変えることを狙った、さすが孫さんという戦略。自らを坂本竜馬に例え、「ボーダフォンとチャイナモバイルが薩摩と長州で、ソフトバンクは両者を結びつけた海援隊の役割」と、明治維新の原動力となった薩長連合になぞらえるだけのインパクトがありますな。恐れ入りました。