Network Externality

ネットワーク外部効果(ネットワーク外部性)とは、ネットワーク的な性質を持ったサービスや製品における経済的特性のひとつで、「利用者が増えれば増えるほど、そのサービスや製品の利用者全体の利益・利便性が向上する」、という特性。Externalityとは経済学用語で、ある行為の結果が第三者に影響を与えることを意味する。たとえば携帯電話など、加入者が1人しかいない場合、加入価値はゼロだが、加入者が2人になれば、互いに通信ができるという価値が生まれる。そして加入者が増えれば増えるほど、利便性はいっそう高まり、消費者のWTP (Willingness to Pay) を押しあげる。こうした現象がネットワーク外部効果で、「消費量」を増やし、「消費者」のWTP を押しあげ価値を生み出す「消費者側」の視点。


一方、規模の経済 (economies of scale) とは、生産者が生産量を増やし、生産単価を引き下げ、全体の生産コストを下げることで、価値を生み出す効果で、「生産者側」の視点。


ネットワーク的性質を持ったサービスは普及率が高まれば高まるほど価値が上がるため、さらに利用者を増やそうとする「正のフィードバック (bandwagon effect)」が生まれる。そして普及率がある水準を突破すると、利用者数が一気に跳ね上がるが、その境界点となる普及率水準がクリティカルマス (Critical Mass) 。この跳ね上がる点がネットワーク外部効果の特徴。


今回の次世代DVD戦争に当てはめると、HD-DVD軍主力のワーナー自身がクリティカルマスを演出、利用者数が一気に跳ね上がるようBD陣営に飛び込んで、下図のAからBへゲームの終結シナリオを描いた。しかも、HD-DVD陣営に決定的ダメージを与えるタイミングで。それだけ、コンテンツの力は強力だった一方、DVD業界の雄ワーナーも困っていたということ。

複雑系の勝利

ある製品やサービスを投入し、市場全体のパイを大きくする場合、供給者と顧客とを結ぶバリューチェーンだけでなく、価値を高めてくれるサポーター(補完的生産者)との協調戦略が重要で、より多く・より長期的な友好関係を築くことで、市場は拡大する。つまり、単一の製品で勝負するのではなく、それに関わる様々なサービスに付加価値をつけて製品群・企業群・生態系として戦った方が有利ということ。今回の次世代DVD戦争でも補完的生産者が重要な役割を担った。

  • ソフトメーカー(映画会社):

東芝はワーナーのニーズを聞いてHD-DVDのフォーマットを作ったが、容量に限界があった。BD陣営はディズニーを容量で感服させ、著作権意識の強い20th Century FOXにはBDプラスという著作権保護技術をわざわざ開発。大容量だけでなく細かな対応を含めあわせ技で、規格化の勝敗を大きく決定するソフト側を手なずけたBD陣営。

  • ハードメーカー:

東芝は、07年クリスマス商戦に$99でHD-DVD本体を投入。その価格帯ではうまみがないので、東芝以外だれも参入できず、最後の希望だった中国メーカーの米国市場参入も見送られた。一方BD陣営は、安価な機器開発で定評がある船井電機をくどき、BDプレーヤーの価格を引き下げ、裾野を拡大。またBD搭載のプレイステーション3を積極的にプロモーションすることで、ゲーム市場とも協調。結果的に自分で自陣の拡大を抑制した東芝と、補完的生産者の力をかりて市場に幅をもたせ、包括的総合力で機動したBD陣営との違い。