東芝の敗因I

以下3つの主要因について考察。

  • ワーナーの鞍替え
  • 小容量
  • $99という価格設定

なぜワーナーはBD陣営に寝返ったのか?

規格が一本化されず、HD-DVD とBD 勢力が拮抗している状況下では、関ヶ原の合戦同様、消費者を含む利害関係者の多くは傍観者で、下図Aの状態。実際、米国DVDの売上は年率3-4%で低下。このままにらみ合いの状態が続くと、低迷が長期化する可能性大。ではゲームの流れを変えられるのは誰か? 07年クリスマス商戦で優勢勝ちしたBD陣営、それを遠くから見守っている映画会社が、HD-DVD陣営になびく可能性は低い。それなら、HD-DVD軍主力のワーナー自身がBD陣営に飛び込んで、Bの状態へ流れを変えるしかない。しかもそれをHD-DVD陣営に最も大きなダメージを与えるタイミング、世界最大の家電に関する展示会 (International CES) の直前に実行。HD-DVD陣営はCESで予定していた記者会見を中止せざるを得なくなり,そのことがHD-DVD陣営の動揺ぶりを世間に知らしめた。その後、小早川秀秋の寝返りで雪崩をうったように東軍に加わった関ヶ原の合戦のように、これまで傍観していたベストバイやウォルマートなど多くの利害関係者がBD陣営支持へ。これが後ほど説明する network externality と呼ばれる効果。


関ヶ原の合戦との違いは、家康が大筒で小早川秀秋を威圧し寝返らせた一方、今回はワーナーが業界全体のパイを大きくするため、上図のAからBへ自らゲームの流れを変えたこと。それだけ、コンテンツの力は強力だった半面、DVD業界の雄ワーナーも困っていたということ。ある意味、ワーナーは鎌倉倒幕の流れを自らつくった足利尊氏のような役回り。幕府(東芝)にとっては、これまで信頼を置いていた源氏の雄、足利氏(ワーナー)の思わぬ寝返りを受け、まさに寝耳に水の状態。たった一人の参加者が、ゲームの流れを大きく変えた典型例。