東芝HD-DVD撤退

固執の原因: 東芝 vs. ソニー

既存DVD規格の権利を持ち、その延長上に新しい規格を作り上げたい東芝 (HD-DVD陣営) と、新しい技術で新規格を狙うソニーなどBlu-ray Disc (BD) 陣営との固執。旧式の技術の延長にある新規格と、新しく技術を擁立した新規格との戦い。

戦略: ハリウッド vs. 録画

  • 東芝: 録画よりハリウッドの支持固めに注力 = 前回勝利したDVD規格の戦略を踏襲
  • ソニー: 日本におけるデジタル放送の「録画」に主眼-> その後06-07年にハリウッド = メディアの寿命「10年説」に従い、97年に始まったDVDの10年後、07年を目標

戦歴:

  • 02年 Blu-ray Disc (BD) 陣営の旗揚げ: 日欧韓のAV機器メーカー9社
  • 03年 HD-DVD陣営の旗揚げ: 東芝NECなど
  • 04年 コンテンツ争奪戦: ハリウッド映画会社に対するロビー活動激化
  • 05年 パソコン業界へ波及: インテルマイクロソフトHD-DVD陣営、HPは両者支持
  • 06年 発売: 値下げ競争激化
  • 07年 死闘: 両陣営とも拮抗
  • 08年 決着: ワーナーがBD 陣営へ鞍替え

序盤戦 (04年): 東芝有利
東芝は、前回のDVD規格同様、ハリウッドで最も親しいワーナーの意見を取り入れてフォーマットを作成。04年秋にワーナー、パラマウント、ニューラインシネマ、ユニバーサルがHD-DVDを採用。BD陣営は、ソニー・ピクチャーズやディズニーが支持を表明。このときのシェアではHD-DVDが圧倒的優位。


中盤戦 (05-07年): 拮抗
BD陣営が反撃開始-> FOX がBDを採用、06年初にパラマウントとワーナーがHD-DVDに加えBDも採用->形勢が拮抗


天王山 (07年クリスマス商戦): BD 有利
07年から毎月の販売ソフト数はBDが2:1で有利-> 11月に東芝が$99でプレーヤー本体を投入-> HD-DVDのシェアは上がったが、$99で買うユーザーは$35もするHD-DVDソフトは買わない = ハードの台数を増やしてもソフトに反映しない-> クリスマス商戦では東芝HD-DVDプレーヤーより$100高いソニーのBDプレーヤーが競り勝ち、全体でも売上トップ


終結 (08年): ワーナーの寝返り
1/4にワーナーがBD陣営へ鞍替え-> これまで傍観していた大名が小早川秀秋の寝返りで雪崩をうったように東軍に加わった関ヶ原の合戦のように、ベストバイやウォルマートなどがBD陣営支持へ-> 6年前BDが産声を上げた2/19に、東芝HD-DVD事業の終息を宣言。