オープンソース化の源泉

前回、Amazon を例に紹介したオープンソース化。具体的には、誰もがサイト(島)の資源を使ってお金もうけできるよう自らの頭脳部「商品データ」の全てをわかりやすく公開(APIを公開)。それによりAmazonは、何もせず勝手に島の売れ筋商品をわかりやすく表示してくれる強力な多数の営業マンを確保。サポーターの衆知を集め孤島から経済圏へと成長したAmazon、この仕組みから15%の上納金を受け取っていたため、島外営業マンの利益率が島内営業マンを上回る好結果を生んだ。

しかし、リナックスに見られるように、多くのオープンソースは、1) 経済的インセンティブ2) 他者に何かを強制する手段、3) 雇用関係を基盤とする組織的指示命令系統、が存在しない世界。つまり、全て参加者の自発性次第で進行する世界。ではその自発性はどこから生まれるのか。そこにオープンソースを考える本質があり、リーダーシップにも寄与する。

ウェブ進化論」の著者-梅田望夫さんが、世界中の人々が使うソフトウェアをオープンソース方式で開発した唯一の日本人、松本行弘氏から聞きだした答えが、「ほとんどの人は、適切な大きさと複雑さを持ったいい問題を探しているんですよ。」

世界中に知的レベルの高い人々はたくさんいるが、その大半は自分で問題設定することができない。プログラマーの世界で言えば、プログラミングは好きだが何のプログラムを書けばいいかわからないという人が世界中に溢れている。成功しているオープンソース・プロジェクトは、そういう人々に次から次へと「適切なサイズの問題」を供給している。例えば、リーダーが大きな構想を打ち出していればいるほど、新機能の開発が進めば進むほど、ちょっとした不具合や開発が遅れている項目などが、「適切なサイズの問題」として不特定多数に提示され続ける。継続的に「いい問題」が供給されるなら、プロジェクトは成功する確率が高い。松本氏いわく、「新聞にクロスワードパズルが載っているでしょう。あれですよ。見つけると解きたくなる人がいる。

「適切なサイズの問題」を供給し続ければ、アメとムチがなくとも知的欲求を刺激し、人々を駆り立てることができるということ潜在的にやる気のある人々を率いる際、頭の片隅においておきたい普遍性を帯びた教え。