効果的説得とは-III

応用編

1) グリンピースからのダイレクトメールとは

  • 返報性のプレゼント: 絶滅が危惧される可愛らしい動物のステッカーをプレゼント-> 次はあなたが恩返しをする番
  • 好意・類似性: ステッカーの端にはグリンピースのロゴ-> あなたもグリンピースの仲間
  • 恐怖感: 石油まみれの海鳥や公害などの絵-> 読まずに捨てないよう恐怖心や緊急性をあおる
  • 反射的な回答を引き出す質問: 毎年アメリカだけで3億トンもの有害物質が排出されています。あなたの町を守るために、政府はできるだけのことをやっていると思いますか。あなたの町の周辺に有害廃棄物の処理場を建設することに賛成しますか。-> 極端な恐怖心を与えることで、論理思考を麻痺させ、反射的回答を引き出し、送り手側陣地へ誘引
  • 信憑性: 「グリンピースは、我々の水、空気、大地を汚染させている犯人に対して、直接行動を取っている組織の一つで、有害物質を根源から絶つために戦ってる」と、功績を示す具体事例や今後の行動活動を添付。そして、たたみかけるように、直接戦う「最前線の活動家」になる必要はないけど、アンケートに答え寄付金を送って欲しいと懇願-> 信憑性を担保し、献金行為の方が容易で実行可能だと思わせる巧妙なトリック
  • おとりの対比効果: 寄付金は、1,500円、2,500円、3,500円、5,000円、10,000円のいずれかを選択-> 10,000円と対比させることで、1,500円や2,500円が小額に思える-> あらかじめ高い数値を要求して、徐々に譲歩すること「拒否したら譲歩」で、相手の譲歩も引き出す「返報性」の一種 -> お寿司の松竹梅などランク付けをするのは、消費者を中クラスへ誘引するためで、実際に注文も多く利幅も高く設定

2-1) カルト宗教の巧妙な洗脳術とは

  • 情報の遮断: 建物は周辺から隔離、部外者を強制的に排除、教団以外の情報を遮断
  • 好意・類似性: 「選ばれたければ、選ばれた人のように行動しなさい。あなたが選ばれないのは、罪深く、救済されていないから。救われたいなら、教えに従いなさい。」-> 洗礼の儀式、新しい名前、特殊な服を与え-> 自分は選ばれた存在という確信を信者に与え-> 仲間意識を強化し、我々が誰であるかという社会的アイデンティティを確立-> 外部の人々は家族であっても邪悪で憎むべき存在
  • コミットメントと一貫性: 小額の寄付-> 本当に献身しているのなら、どんなことでも喜んで協力するはずでは-> より多くの献金を要求-> 初期のコミットメントと一貫性を保ちたい気持ちから、次第にエスカレートし、終いには神聖な目的に対する献身として、多くのことを自ら進んで実行
  • 罪悪感: 教団の理念とは異なる何かを持っていると負い目を感じる-> 全ての財産を差し出すことで罪悪感を軽減-> 教祖から強要されたセックスでも、自己犠牲的な修正や浄化が必要だったと考え、負い目を軽減
  • 信憑性の演出: 教祖の経歴を偽装-> 神聖化-> 権威付けをして盲目的服従
  • 自己説得: カルトに対する世間の強烈な否定に直面しても反論することで、他人を説得しながら自らをも説得する自己説得または自発的説得-> 新しい信者を獲得することで、信仰の正しさを証明-> 信念を強化する一種のコミットメントと一貫性
  • 脳の極限状態を誘導: 大音量のスピーカーで聖書を流し、訓練担当者が付きっきりで聖書を読み、トイレにまでついていく-> 新しい信者を一人きりにせず、自ら考える余裕を与えない-> 食事、水、睡眠を制限して脳の極限状態を誘導-> 意識が停止し、理解しようとする気力もなく、宣伝が無意識の中に染み込み始める-> 光が見え、音楽が聞こえ、美味を感じ、存在を表す根源的な震えが口をついて出てくるまで何時間も費やす-> 活動を絶え間なく続けさせることで、注意深く考えたり、内省したりする機会を制限-> 一種の洗脳教育-> 似た事例は戦前の軍事教育や高度成長期の猛烈サラリーマン

2-2) なぜ脱退できないか?

新興宗教に入った後、理性的に考えるとおかしいと思われることがあっても、脱退することは、家族や財産を投げ打って入信した自分の過去全てを否定することになる。投げ打った時間が長ければ長いほど、自分を否定する重みも増すので、家族が必死に説得しても逆に固執する。

恋愛でも、ダメダメ彼氏を見かねて両親がかなりいい男を紹介しても、ダメ彼との恋愛暦が長ければ長いほど、離れようとしない。自分の恋愛を全否定し、自分が間違っていたと自ら認めることになるため。

a) 偉大な語り手とは: 「好感」を持たれる資質

レーガンとブッシュの選挙参謀を勤めたロジャー・ルイスいわく、「好感」を持たれる資質。聴衆が好感を持てば、犯罪以外はどんなことをやっても許してくれるだろう。逆に、聴衆が好感を持たなければ、全て的を正しく射ていたとしても、そのことは問題にされないだろう。だから、聴衆が思っていることを話し、状況が有利になるようにコントロールせよ。支持者の前では、一面的な賞賛のみ、反対者の前では両面を提示したうえで反対意見を退ける二面的討論をせよ」。

b) システムの3要素で語る

惑星科学者 松井孝典さんいわく、「考える対象を全体として見たとき、私はシステムの3要素でとらえるようにしている。1」 対象がどういう構成要素でできているか、モノの特定; 2」 駆動力の特定; 3」 構成要素間の関係性。例えば地球というシステムだと、太陽からの熱やマグマの熱が駆動力となって、地表付近や地球内部が循環し、構成要素間の物質やエネルギーの流れが関係性となり、その関係性が地球というシステムを特徴づけている。同様に生命、人体、会社というシステムも、システムならみんな同じで、システムの3要素でとらえると、特徴が浮かび上がってくる。」