ムダを省くとは

耶律楚材が残した私の好きな言葉、「一利を興すは一害を除くにしかず、一事を生かすは一事を減らすにしかず」。一つの良いこと新しいことをやるよりは、一つの悪いこと不要になったものを取り除いていく方が効果的、という意味。「ムダを省く」という観点から、単に人件費カットや工場閉鎖ではなく、業界の流れを変える大局観を通して、ゲームのルールを変える可能性を秘めた巷で話題の「カーシェアリング」と「クラウドコンピューティング」の本質にせまった。

1. レンタカー + Network Externality = カーシェアリング

レンタカー に 利用者の価値観の変化、所有価値から利用価値へが加わり、Network Externality が魔法の杖として機能すると、自動車業界を震撼させる「 カーシェアリング」。以前解説した内容はこちら

2. クラウドコンピューティング = 電力 + 保存容量

例えばGmailというクラウドメールは、送受信などの処理をする「パワー」と、メールを「保存するサーバ機能」で構成されるので、「コンピュータパワー + データサーバー = クラウドコンピューティング」。
中でもパワーという側面が重要で、電気のように必要な時に必要なだけ使用できるという特性。夏の電気需要のように、送受信のピークに合わせて自社設計していた数年前に比べ、70-80%ムダが省ける。電力が増すとブレーカーが落ちることもなく、需要に応じて柔軟に対応してくれる。加えて初期投資もいらないので、かなり大きなデータベースを持っている企業でも数万円/月で済む。Gmailがあれば、あえて自社でメールサーバーを管理する必然性もない。ただ、クラウドの「あちら側」にデーターを置くのが不安なら、サーバ機能だけを「こちら側」で管理することもでき、それでも大幅なコスト削減になる。

エネルギーとインターネットの境界線

Googleの事業コストの大半が電気代なので、データセンターの建設には「電気代の管理」が至上命題。Googleデータセンター建設における「電力効率化へのこだわり」を見ても、電気という概念がコンピューターと密接に関わりだしてきたことが分かる。
つまり、データセンター事業は、設備産業ビジネスから「エネルギー産業ビジネス」に転換し始めたということ。インターネットとエネルギーのビジネス境界線があいまいになってきたということ。そこでは、規模の経済が働くため、電力の歴史同様、個々の自家発電から最終的には数社による寡占体勢になるはず。
Googleがエネルギー産業ビジネスに参入するなんて・・・でも実際、「電力効率化へのこだわり」を家庭に持ち込んだ試みが「PowerMeterでスマートグリッド分野に参入」。Googleは、リアルタイムのエネルギー使用量を定期的に目に見える形で確認することで、ユーザーの電力利用量の削減を促し、行動の変化により平均で5-15%の利用量削減につながると述べている。


問題解決の基本「ビジュアル化」を持ち込み、下図のIV 「事業の共食い化」戦略で電力会社に挑むGoogle。これは、カーシェアリングにおけるトヨタ vs. オリックス/パーク24と同じ構図。
Googleにとっては、ネットビジネス究極の目的「人々のあらゆる情報をデジタル化して、人間データベースを構築すること」の一環なのかもしれない。企業側も所有価値から「利用価値」の流れに乗り出そうとしている。利用価値をトコトン追及する革命運動はDBの有効活用によって今後ますます加速、その方向は真の意味での顧客中心主義を指している。