経営の本質I

経営者とは

経営者の行動を構造化したのが下図。優れた経営者とは、これら一連の流れをライバル企業を上回るスピードと頻度で、具現化できる人。

  • McKinseyの土台を築いたMarvin Bower いわく、「生きた経営の意志を持ち、システム化された組織をつくること。初めに明確な経営の意思がなければ企業は成立せず、その意思を伝達し、実現するための経営システムを構築すること。」
  • 安岡正篤 先生いわく、「元来、識には知識・見識・胆識の3つがある。知識に判断力が備わると見識、その上に肝っ玉を伴った実行力が加わって初めて胆識となる。したがって知識だけではだめで、知識が見識になり、その見識も最後には胆識となって、初めて役に立つ。」

(環境を正しく認識)-> 目標設定-> (目標と現状のギャップを把握)-> 目標達成プラン作成-> 社員・組織を活性化-> (進捗状況をチェック) -> 軌道修正

経営者に必要なスキル

それには、ビジョンを描き戦略に落とし込む「構想力」、従業員の能力とやる気を高める「コミュニケーション力」、組織を設計し人を配置する「組織を動かす力」、何としても最後までやり遂げる「強烈な熱意」が必要。これらは、大きく「科学系」と「アート系」に分類でき、Biz school で学ぶマネジメント論は、概ねマネジメント知識。

  • 科学系-左脳: マネジメント知識 (MBA で学ぶマネジメント論) +論理的思考
  • アート系-右脳: リーダーシップ (要求されるスキルは掛け算の関係)

MBAの限界

1) 分析力・洞察力
授業全般を通して基本的な論理思考は身につくものの、実践で使える分析力や先を見通す洞察力には限界がある。戦略系を志向する学生が陥りやすいワナとして、ケースから学んだかっこいい事例を頭に入れるだけで、その大前提となる「問題の本質を洗い出し、解決法をいくつか挙げ、それらの長短を比較し、長期的視点に立って優先順位を決め、タイミングを計って実行」する一連の判断力や、「歴史的経緯やクロスボーダー軸から数年先を洞察」する先見性は、ものすごい時間と労力を要するため、おろそかになりがち。それらを補うために、歴史的経緯「縦軸」、競合企業との関係「横軸」、海外への影響「クロスボーダー軸」から問題の本質をあぶり出し、「知識を知恵に昇華」させる訓練をしたのがこのブログ。

2) リーダーシップ
Biz school にも組織論やリーダーシップ論があるものの、左脳的科学を形式知化して効率よく教えるMBAには適さず、これらは本来、実践を通して学ぶものであり、文化の違いもあるため、実務とはかなり距離感がある。経営学の大御所 ピーター・ドラッカーのじいちゃんは、「私が出会った優秀なリーダー達に共通する唯一無二の特徴は、彼らがある一つのものを持っていないことだ。彼らは、カリスマ性を殆どあるいは全く持っていなかった。リーダーの基本的特性を探し出すことなど不可能だ」と言い切っているほどなので、形式知を効率よく教える技量があっても実務経験に乏しく、人生の極みや悟りの域に達していないMBA教授陣では、暗黙知を教えることなど所詮ムリ。

経営者にとって最も重要なスキル: リーダーシップ

仮に左脳系のスキルを持っていなくても、そういう能力を持った参謀で代替すればいいので、最も重要なスキルは、人を引きつける人間的魅力。先人の例をあげると、衆知を集める才に経営の神様という称号が贈られた松下幸之助のじいちゃん、狡猾な家康をして勝てないと思わせた豊臣秀吉、今太閤と言われた田中角栄諸葛孔明を取り込んだ劉備玄徳、左脳系スキルで圧倒的に劣っていたものの最終的に勝利した劉邦など。

  • 韓非子いわく、自分の能力を使うのは三流で、他人の知恵を使うのが一流のリーダー。「下君は己の能を尽くし、中君は人の力を尽くし、上君は人の智を尽くす」。
  • 史記いわく、「桃李(とうり)言わざれど、下自(したおの)ずから蹊(みち)を成す」。成蹊大学の由来で、桃や李(すもも)は何も言わないけど、美しい花やおいしそうな実に惹かれて多くの人が集まることで、木の下には自然と道ができる。
  • One Piece 鷹の目のミホークいわく、「能力や技じゃない その場にいる者達を次々に自分の味方につける。この海においてあの男は、最も恐るべき力を持っている!」 

ピーター・ドラッカーに、「基本的特性を探し出すことなど不可能だ」と言わしめた難解なリーダーの条件。そのリーダーシップを学び高めるには、人生の極みや悟りの域に達した先人に学び、それらを組み合わせ、自分に適した形に修正していくしかない。その最も顕著な特性は、松下幸之助のじいちゃんが「指導者の条件」の中であげた102ヶ条の条件、全部満たす人は人類史上まずいないけど、ゼロがひとつでもあってはいけないということ。つまり、リーダーに求められるアート形のスキルは、掛け算の関係にあり、どれか一つのスキルがゼロかマイナスだと、総合的にはゼロ、最悪の場合はマイナスになるということ。