日本の選択
現状
製造業が現地生産を増やしているため正確ではないが、業種別GDPシェアと経常収支の推移をみると、製造業は衰退傾向。とりわけ海外投資から得られる利息・配当の所得収支が、貿易立国のシンボルである貿易収支を上回ったことで、実質、貿易立国から投資立国へと変化。
- 業種別GDPシェア: 80年代にサービス業が製造業を逆転、その差は拡大中(直近ではサービス業40% vs. 製造業 25%)
- 経常収支: 05年に所得収支が貿易収支を上回り、07年は貿易収支+12兆円に対し、所得収支は+16兆円 http://www.mof.go.jp/1c004.htm
一人当たりGDPでは、OECD加盟30カ国中、平均以下の18位へ転落、為替の影響もあるが「金持ち日本」とはいえない状況。対内外投資でも日本の国際的地位が低下し、不人気ぶりが顕著。ライブドア事件以降、会計検査の強化、ファンドの連結会計化、税制の強化、上場審査の厳格化など、外貨が逃げていく施策のオンパレード。
- OECD諸国の一人当たりGDP: 86年6位、96年3位、01年5位、03年9位、06年18位 http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/h18-kaku/percapita.pdf
- 対外直接投資額(日本から海外): 世界の投資額が伸びる中、低下傾向 (06年世界9位) http://www.iti.or.jp/fdistat.htm
- 対内直接投資額(海外から日本): GDP比で日本2%、英国37%、フランス29%、ドイツ18%、中国14%、米国13%
B/Sに相当する対外資産残高を見ると、GDPと同規模の560兆円。つまり運用利回りが1%上がれば、GDPを1%押し上げる効果あり。中東など産油国では、資産運用を担当する投資庁があり理論的ポートフォリオを組むが、日本の投資先はもっぱら国債中心。
- 対外資産残高: GDPと同規模の560兆円 http://www.mof.go.jp/1c018.htm
- 外貨準備高: 約1兆ドルあるが、短・長期の米国債への投資がほとんど
今後
国際化がさらに加速する環境下では、製造業を中心とした貿易立国では成長が見込めず、実際、経常収支の拡大は、所得収支でなされている。これまで蓄積してきた世界最大規模の金融資産を活用して、貿易立国から投資立国への国策転換が必要。具体的には、資産の有効利用と外貨を呼び込む施策が急務。
- 1,500兆円の個人金融資産: 海外投資に振り向け、利息・配当などによる所得収支拡大
- 国の資産: 投資庁の創設により有効運用
- 外貨呼び込み策: 税制改革、取引所などのインフラ整備、参入を容易にして罰則を強化する施策