大企業病 教訓II-中堅幹部からの改革

「トップの経営や方針が誤っていると確信した場合、中堅幹部の立場で何ができるのか」という問い。院政のしがらみに苦しむ現職トップにも当てはまる問題だが、難問のため、長銀で実体験をもつ、箭内 昇さんの言葉を引用。

「まず、胆力を鍛える。そして同志を増やせ」
私がとった最終行動は辞職だった。今思えば、それまでの私の行動はたぶんに独り相撲的な要素が強かった。もっと以前から同じ思いの仲間と意見交換をし、行動を取っていれば、総会屋事件のリークような危ない橋を渡ることもなく、企業信用を脅かすおそれのあるクーデターを企てなくても銀行は変えられたのではないかという思いは今でも強い。もっとも現実には、いくら同志を結集しても行動を起こすことは難しい。企業はトップ自身が自己改革しない限りなかなか変われないものだ。しかし、企業が誤った道を歩いているときは、必ず内外のいずれかで大きな出来事が起きることも事実である。長銀でも今から振り返ればその機会は何回かあった。そんなときに速やかに行動が起こせるように、あらかじめ同志と結束を固め、ビジョンを作っておくことが重要なのだ。


大企業の中には何の危機意識も持っていない者がたくさんいる。それに比べれば問題意識を持っているものは2倍立派だ。しかし、それを公然と口にするのは2倍難しい。さらに行動を起こすのは4倍勇気がいる。自分に迷ったときは、「なぜ会社に入ったのか」、原点に戻りあの頃の純粋な動機を思い出して欲しい。最終的には「いざというとき」自分の信念を貫き、行動を起こせるかという「胆力」の違いがサラリーマンとビジネスマンの分かれ目になる。サラリーマンは企業に運命と人生をゆだね、ビジネスマンは自分を見つけ自分に生きる。その差は企業を去った後に必ず現れる。

15項目の「大企業病診断書」

  1. 経営者は現実より「こうあるはずだ」という理念を優先する
  2. ミクロの数字よりマクロの数字を好む
  3. 計数よりトレンドやフィーリングを優先する
  4. 現場の直接情報より本部経由の整理された間接情報を好む
  5. 計画はいつもベストシナリオだけ
  6. トップのスピーチはいつも言葉だけが踊っている
  7. トップは難しい取引先やマスコミなどとの会合を嫌がる
  8. 不愉快な話は上司に伝えにくい雰囲気がある
  9. トップ以下、社内の人間との会食が多い
  10. 同じような顔ぶれによる内部会議が多く、かつ重要視される
  11. 内部資料作りに割かれる時間が多い
  12. 現場よりスタッフ部門のほうが上位という雰囲気がある
  13. 小さなミスには厳しいが、大きな失敗には寛容
  14. 主流派と呼ばれる部門が長い間続いている
  15. 早くから社長候補がささやかれ、おおむね実現する