企業経営-教訓I

現状認識チェックリスト

戦略策定において陥りやすいワナ -優秀であるが故の壮大な目標設定(ときに採算性の合わない戦略、現実離れした構想)、合理性・論理性を欠いた評価、変化への対応の遅れ- から逃れるには、未来の不確実性や情報不足を理由に思考を停止したり、願望を信じたりするのではなく、問題の本質を追及し、徹底的に論理の示すところに従う一方、前提を過信せず、環境が激変した場合に備えること。

目標
  • 戦略: 限定された根拠に依存していないか? 本当に達成できるの? 技術者の夢物語?
  • 指標: 自社の強みに関連した指標だけ? 市場シェアに依存しすぎ? 顧客の動向は?
評価・認識
  • 同一路線の継続(主に顧客評価): 時代遅れでは? 大きなトレンドは? パラダイムがシフト?
  • 類似市場参入(市場評価): 似て非なる市場では? Value chain、顧客のニーズ、慣習は同じ?
  • 自己評価: 本当の勝因は? 商品-マーケティング-CS-運など実際はどれ?
  • 競合評価: 成功した敵の真の理由? 先陣を切った業界リーダーの狙い? 上っ面だけ真似?
変化への対応
  • 仮定を疑え: 複数のかく乱要因が同時に起きたら? 根幹が崩れたら? パラダイムのシフトが起きたら?
  • 正しい大局vs.小局のつまずき: M&Aシナジー? 業務見直しの影響? 中間管理職へ不可能な目標?
  • 競争相手の誤認: 新しい敵、代替品にも目を光らせている?

失敗の主要4局面での警告

1) 新規事業
  • 見果てぬ夢: 問題に取り組むにつれ複雑化し、より強力な戦略を捜し求める悪循環へ、結局どのカードを切っても解決できない
  • 同床異夢の株主: パートナーシップは信用強化の大事な要素だが、本質的に異種混合が甚だしい複数のスポンサーが集まった場合、とくにお互いつばぜり合いをしている敵同士の場合、環境の変化に従った戦略がとれず破綻を招きやすい
  • リスク回避: 息の長い新規事業には一度に投資するな
2) イノベーション導入&変化へ対応(無為無策が失敗とならないために)
  • 変化の兆し: メーカーから小売へのパワーシフト、顧客ニーズの変化など見逃していない?
  • 社風: 技術に没頭するあまり、市場や顧客への意識は二の次? 変化への対応を呼びかけている?
3) M&A
  • うぬぼれ: 多くは失敗するがオレならできる⇒圧倒的メリットがある場合にのみ実行すべき
  • シナジー実現の困難さ: シナジーは逃げ水のようなもの、特にマイナスのシナジーや時間のプレッシャーに注意、シナジー実現コストはシナジー利益の2-3年分
  • 理性: 買収には感情的勢いがあり、いったん始まると、もはや歯止めは利かない⇒買収額をあらかじめ設定すべき
4) 競争相手に反撃(非合理的戦略をとらないために)
  • 起死回生の一発: 絶望的状況で起死回生の一発を狙っている幹部には用心、たいていはより悪化⇒誤りを認め、素直に行動すべし
  • 中間管理職: 彼らなりの目標・動機・方法があるので、思ったとおり動くとは限らない
共通点
  • オーナー経営者が鶴の一声を放つとき、経営の合理性はしばし二の次
  • 自分の誇大宣伝を自分で信じ始めたときが真の危機