敗戦の教訓 II

あの戦争は止められたか?

真珠湾攻撃がなくても、軍はいずれ手をあげていたはず。仮に天皇が戦争反対を口にしたとしても、「天皇のとりまきが悪い、天皇は彼らに洗脳されている、とりまきを殺して弟宮を皇位につけよう」と画策するほど、開戦時の軍部は誰も止めることができない権力を握っていた。不況による貧困打開策として、欧米列強が当然のごとく行っていた進展地開拓を進めれば、いずれ誰かと衝突せざるをえず、残念ながら日本には戦争に向かう必然性があったのだろう。

特異な国民性:

1) 動機さえよければ

絶大な権力を握った軍部、その転換点は2・26事件だったが、背景には4年前の5・15事件がある。世界大恐慌の影響を受けて日本でも昭和恐慌がおこり、冷害・凶作のダブルパンチを受けた農村では娘の身売りというという事態にまで悪化。そんな中、「農村を貧しさから開放し、日本を天皇親政の国家にしたいがために立ち上がった」と涙ながらに訴えた5・15事件の首謀者らに、全国から100万を越す減刑嘆願書が集まり、判決の日には傍聴席のおばーちゃんが立ち上がって、「裁判長様、この青年たちを裁かないでください」と涙ながらに訴える一幕もあったほど。加えてマスコミも同調する始末。彼らは暗殺者=テロリストなはずなのに、国民の同情は凄まじく、「動機が正しければ、道理に反するようなことも仕方ない」というようなことを受け入れやすい風潮があった。理性より感情に流されやすい体質。

2) 猪突猛進

「欲しがりません、勝つまでは」の下、貧しさに耐え、装飾品・金属なども軍需物資のため全て提供。女性たちは出兵した兵士のために千人針を縫い、小学生も工場で働き、日本国中が一丸となって突き進んだ戦中。敗戦後もどん底の生活から高度経済成長を成し遂げるなど、いったん目標を設定すると、猪突猛進する集中力。いい意味でも悪い意味でも極限まで達しなければ止まらない列車。バブル時の銀行融資合戦でもふれたように、過度な同一意識のためか、一度大勢が決まると「乗り遅れるな」的要素が働きやすい。

3) 失敗から目をそむけるズルさ

平和を強調するわりに、戦争の内実を知ろうとせず、全て当時の戦争指導者のせいにしてしまうズルさ。様々な要因が重なって起きた長銀日債銀の破綻問題、「国民感情が許さない」からといって、一当事者だけを刑事責任という形でやり玉に挙げようとする構図は変わっておらず、かえって問題の本質から目をそらせてしまい、それがその後の金融危機を招くことにもなった。物事は、善か悪かで単純に割り切れるものではなく、多くの場合、真実はその中間にある。歴史を作り、また歴史に作られるのも人間。謙虚に歴史に学び、人智を尽くして歴史に挑戦すべき。