敗戦の教訓 I

大東亜戦争は我々にいくつかの問題提起をしてくれたが、その中でも失敗の本質は、「自己を客観視→自己否定→ 自己変革」であろう。その矢印への移動を妨げる多数の物理的・精神的障壁を様々な資料から教えてもらったが、最後はちょっと気になった事柄、「あの戦争は止められたか」、「特異な国民性」、に対するコメントで締めとする。

問題提起

  • 自得・否定・変革の難しさ: 己と敵の分析結果が示す道を素直に受け止められず、論理性・客観性を欠いた現実認識は最終的に超甘な前提、希望的観測、精神論へと逃避
  • 失敗から学ぶ姿勢: 突っつけば穴だらけで、皆反省しその非を十分認めていることなので、いまさら突っついて屍に鞭打つ必要なし→人的ネットワークに対する配慮が優先
  • リーダーシップ(大局観+度量): シビリアンコントロールが働いていた明治時代は統帥権の乱用は阻止、国民から石を投げられても講和を結びに行けるような大局に立てるリーダーが存在、大局観を持った人材は対米戦に至る過程で左遷、過去の否定を受け入れる度量を持ったリーダー不在
  • 人事システム: 陸軍は戦闘結果よりリーダーの意図・やる気が評価(積極論者が過失を犯しても甘い人事: e.g. ノモンハン大惨敗の首謀者である服部-辻コンビは、一時的に左遷されたのみで2年後には軍部中枢の作戦部へ復権、対米開戦への原動力)
  • 作戦部の歪んだエリート意識・閉鎖性: 情報がカギを握った対米戦で、情報参謀からの確実な報告も無視する傾向大、自分達の頭だけの世界へ
  • テロの恐怖: 暗黙の言論統制により自由な意見交換が阻害、軍部権力の源泉

解決策: どうしたら客観視・自己否定できるの?

  • 松下幸之助: 「素直な心」=他人から学び、失敗は改めようという謙虚な心
  • 佐藤一斎: 「人に接するときは暖かい春の心、仕事をするときは燃える夏の心、考えるときは澄んだ秋の心、自分に向かうときは厳しい冬の心」
  • 島田紳助: 「自分から見て、この人はすごい」と思う先輩の漫才を逐一ノートに書き写すテープ起こし(笑いを生む構造や駆け引きのバランスなど明示)+先輩芸人が取り上げていなかった若者の生活・行動をネタに従来にはない「スピード感」を追加(差別化)+売れる前のダウンタウンの才能を見抜き漫才コンビ解散を決意(客観視)
  • 豊田章一郎: 「長期的視点」=確実に巨額の利益を生む「マツダ買収」を直前で静止←短期で比較的容易に大金を稼げるマツダ買収は、「一人一人が日々の改善を積み重ね、徹底してムダを省く」という企業文化の根底を揺るがしかねないと判断