大東亜戦争とは一体何だったかのか? II

戦略: 戦術あって戦略なし

  • 国家戦略(全社戦略): 軍事戦略(陸・海軍対立)+経済戦略+外交戦略=なし
  • 軍事戦略(事業戦略): 山本ですら奇襲攻撃後の戦略なし
要因
  • 合理性・客観性: 己と敵の分析結果が示す道を素直に受け止められず、論理性・客観性を欠いた現実認識は最終的に超甘な前提、希望的観測、精神論へと逃避
  • 創造性・革新性: 伝統的戦闘手法に固執(陸軍は弾薬不足から近距離での突撃銃撃戦=白兵主義、それを精神論でカバー; 海軍は大型戦艦同士による決戦=大鑑巨砲主義=武蔵+大和)⇔ 皮肉にも真珠湾で航空部隊によって戦艦が撃沈された米軍は、空母の増設など航空主兵へ転換
  • リーダーシップ: 日本(大本営政策連絡会議は機能不全、大局観のある人材は対米戦に至る過程で左遷、長期的視点に基づく理想派より、短期的国益を追求する現実派に主導権)⇔米国(統合参謀本部を設置し、陸海の矛盾を緩和、それでもダメなら大統領が決断)

国家総動員法とは名ばかりの国家戦略体制。日露戦争までは引き際を知り、軍部と政治が一体となって機能、国民から石を投げられても講和を結びに行けるような大局に立てるリーダーが存在。もともと戦争の終結シナリオを想定していなかったので、戦略を描けず、戦術に固執、近視眼的な対処療法のみ。現実を客観視して自己否定できず、願望、期待、精神論に逃避。

総括

戦略を立てる前に、アメリカの挑発に乗って思わず手が出てしまったという感じで、ある種の逆ギレ。手をあげたはいいが、どう収めるか終結シナリオをまったく考えておらず、それら欠陥を希望的観測や精神論で穴埋めした無謀な戦い。

全体の流れとして、不意をついた東洋チャンプの先制パンチは予想以上のダメージを世界チャンプに与えたが、次の攻撃箇所を探している間に強烈なカンターパンチをくらい劣勢に。パワー、スピード、スタミナで圧倒する世界チャンプに対し、「なぜ攻撃を受けるのか」、原因究明をせず、作戦が相手に読まれているとも知らず、ただひたすら同じ攻撃指令を出すセコンド(軍部中枢)。戦局が悪化しても現実を直視しないセコンドは、それでも終結シナリオを描こうとしなかったため、目的もあいまいなまま悲惨な戦いは継続。消耗しきった戦力を超人的精神力で補う東洋チャンプ、超ド級のアッパーパンチ2発を受け、頼みの綱だったロシア人レフリーの寝返りにより、あわや瀕死寸前(一億玉砕)まで追い詰められたとき、これまで沈黙を守ってきたボクシングジム会長(天皇)が、分かっていながら誰も言い出せなかった降伏を進言、これでようやくセコンドも白タオルを投げて入れ試合終了。部外者の動きとして吉田茂など和平工作を図った者もいたが、セコンドによって握りつぶされたのが実情。

別の見方をすると、アジアにおける権益を脅かしかねない存在に急成長した生意気な日本に対し、欧米中心の世界体制を堅持したい勢力が意図的に仕掛けた戦争。その誘導作戦に引っかかり、潰された日本政府は、欧米の謀略の怖さを肝に銘じ、戦後は忠実なまでに対米従属路線を堅持。