バブルの教訓-失敗学I

なぜストップできないのか、なぜ最悪の状況にならないと改革が進展しないのか?

80年代後半のバブル
  • 勇気ある「イエス」を活かすシステムの欠如+「ノー」を言えない弱さ
  • 痛みのある決断は自分たちだけでなく先輩たちの責任も追及
  • 当局に都合の悪い情報は圧力によって抹殺(避けるのが当然視)
  • 少数の問題銀行に配慮した「小さな隠蔽」が、邦銀全体そして銀行行政全体への不信へと拡大
大東亜戦争(類似例)
  • 組織は環境の変化に対応して主体的に戦略や組織を変革すべきだが、日本軍という巨大組織が自己変革に失敗→組織として既存の知識を捨てる自己否定的学習ができなかった
  • 戦闘結果よりリーダーの意図・やる気が評価→個々の戦闘結果を客観的に評価し、それを次の戦闘へ知識として蓄積していくことが苦手→官僚組織の中で下克上が進展
  • 基本的価値が共有され信頼関係が確立されていれば、見解が異なっても肯定的に受け止め、学習や自己否定を通して高いレベルで統合が可能。日本軍は陸海軍の対立により、統合的価値観の共有に失敗→長期的な視点に基づく理想派より、短期的国益を追求する現実派に主導権

So what:

  • 勇気: バカ正直すぎてもいけないけど時には、「自ら省みてなおくんば、千万人といえども吾れ往かん-孟子」、という気構え・行動も必要
  • 度量: 「地勢坤(ちせい こん)なり、君子は以って厚徳載物(こうとくさいぶつ)-易経」=大地があらゆる生きとし生けるもの受け入れ、はぐくみ育てているのと同じように、君子は大きな心を持って、徳を高くし、度量を大きくしていかないといけないよ(いかなる批判も素直に受け止める度量をもちなさい)
  • 婉曲術: 忠告を素直に受け止められない上司に対し、様々なたとえ話を活用して間接的に諌める対処法=諌める相手に対応した幅広い教養や演技力が必要
  • 自得: 自己(組織・社会)を客観視→自己否定→自己変革(「人を知るものは智なり、自らを知るものは明なり-老子

Now what: どうしたら客観視・自己否定できるの?

  • 松下幸之助: 「素直な心
  • 安岡正篤: 「自得(じとく)」=人間はまず自己を得なければいけない。人間はいろいろなものを失うが、一番失いやすいのは自己。まず自ら自己を徹見し把握。あらゆる哲学、宗教、道徳の根本問題。
  • 佐藤一斎: 「人に接するときは暖かい春の心、仕事をするときは燃える夏の心、考えるときは澄んだ秋の心、自分に向かうときは厳しい冬の心
  • 豊田章一郎: 「長期的視点」=確実に巨額の利益を生む「マツダ買収」を直前で静止←短期で比較的容易に大金を稼げるマツダ買収は、「一人一人が日々の改善を積み重ね、徹底してムダを省く」という企業文化の根底を揺るがしかねないと判断