なぜバブルの処理に10年以上もかかったのか?

不況の実態=バランスシート不況

金融機関からの借入金は資産担保主義の下、相場情勢(左側の資産)に応じた金額を右側の負債に積み上げていたが、土地や株など資産価格が急落すると左側のみが縮小、右側にある負債は逆に金利負担分を追加して増加。その差額をリバランスするため、有価証券や土地の評価損を計上。土地を売りたいのに買い手が不在、地価さえ上がればという淡い期待が問題の先送りを助長、資産価値がドンドコ低下し長期化する中で、利益の最大化ではなく「債務の最小化」へとマインドシフトさせ、デフレスパイラルを誘発。その結果、企業倒産や自己破産が増加、そのシワ寄せが銀行のバランスシートに集中、融資の最大化ではなく「不良債権の最小化」を誘発。

規模-超高層ビルの頂上から地下まで下落し続けた資産価値(バブル期+過去50年+逆バブル)
  • バブル期の清算=頂上からバブル前まで: レバレッジ効果により超高層ビルの頂上=資産価格の上昇とともに融資額も増加×担保物件に対する融資比率の増加×ノンバンクを介した迂回融資網の複雑化によって同一担保物件に複数の金融機関が多額融資
  • 過去50年の清算=バブル前の非効率な構造問題の適正化: 戦後40年ほぼ一貫して上昇続けた資産価格の影に隠れていた根深い構造問題が、冷戦終了によるグローバル化の進展で海外へのスウィチイングコストが低下、国際比較できるようになったことで表面化(e.g. 世界レベルで最も非効率的な土地利用=割高な地価、不充分な競争政策+多くの貿易障壁=高コスト体質を避けて海外へ進出)、それらが適正価格帯に下がるまで下がり続けた資産デフレ期
  • 逆バブル(空売り)=適正価格階から地下まで: ヘッジファンドなどの猛烈な空売りバブル(バブル期に大規模な資金調達をした流通、ゼネコン、不動産業などメインバンクにとって悪性の三大ガンが、まだ取り除かれていないじゃないか→厳格な基準を適応すれば不良債権問題はまだまだ根深いはず→メガバンクだってあと1-2行つぶれてもおかしくないぞ→株価はもっと下がる→空売りだ)
連鎖-デフレスパイラル:
  • 債務の最小化>利益の最大化: バブル崩壊後の多くの日本企業は、バランスシートは傷んでいるものの本業はまずまずの状態→あまり景気も良くないから極力コスト削減して利益を捻出、それを借金返済へ→多くの企業がそのサイクルに乗ってしまうと、設備投資減+人件費カットで個人消費も低迷=総需要が低下→景気の悪化→資産価格の低下→バランスシートはより悪化→さらなるコスト削減+借金返済と、景気は雪だるま式に悪化
  • 貸し渋り貸しはがし: 銀行の融資機能が事実上ストップ=経済の血流ストップ
  • 景気後退要因: 消費税率アップ、アジア通貨危機

土地神話の壁=地価はいつか必ず戻る=先送り体質

本質がバランスシート不況だったため、株価・地価さえ上がれば問題は解決するという淡い期待が、問題の先送りを助長(米銀=早期処理: 収益に余力のある内に損失を確定、資金を他の分野に回した方が効率的)

公的資金

  • 幾多の抵抗勢力: 銀行局内部(過去の歴史から公的資金導入否定の寺村局長に対し、日銀からの同提案を幹部がわざわざ報告するはずがない)、日銀側(「地価が本当に下がるのか」との大蔵側の問いに確証のない日銀、総裁や副総裁は院の奥から出動せず)、世論(体験主義=長銀日債銀が破綻して初めて納得)、政治(世論や野党に配慮して時期尚早)
  • マイナスの利害調整: 金融機関の破たん処理は厄介=誰が損失を埋めるか+誰を戦犯としてつるしあげるか

以上より、金融機関からの借入金は、資産価格に応じた金額に相当するため、バブル期の借入額は超高層ビルの頂上付近に相当。そこから第一波1) バブル崩壊前の水準まで資産価格が低下、そこからさらに「株価や地価さえ戻れば・・・」という淡い期待を裏切って、第二波2) 戦後40年間に蓄積した高コスト構造に対する修正のほか、債務の最小化、貸し渋り貸しはがし、消費税率アップなどにより、デフレスパイラルに突入。更に資産価格(左側)が下落するので、それに見合った右側のリバランスが必要となり、何度処理しても不良債権は減らない仕組み。そんな中、債務超過を隠したい企業側と不良債権を表面化させたくない銀行側が「見えない、聞こえない不況」を創出している構図に漬け込み、厳格な基準を適応すれば不良債権問題はまだまだ根深いと、第三の波3) 「ヘッジファンド空売り団」が逆バブルを主導し、資産価格は超高層ビルの低層から地表を突き破って地下にまで落下、耐えかねた政府がハードランディング路線に転身、メガバンクにゾンビとの決別を要求、りそな銀行への公的資金投入で一応の幕引き。まとめると、資産価格の下落幅が異常に大きかったこと、問題の先送り気質や公的資金投入の遅れなどにより、デフレスパイラルを誘発したことが長期化の理由。もう少し早めに手を打てば、第三波は防げたし、第二の衝撃波ももう少し緩和できたはず。