監督当局-なぜ機能しなかったのか?(問題認識+障害要因)

問題認識

  • 本質の見誤り: バブルの認識(80年代後半の資産価格高騰=実体経済の反映)、地価高騰の原因(投機であって金融機関の財テク融資でない)
  • 危機管理意識の低下: 地価下落による不良債権化の想定、昭和恐慌は忘却、護送船団方式による破綻回避処置がこれまで有効に機能
  • 地価対策では脇役であるべき: 金利政策を担う日銀が主役で、銀行局の金融政策はあくまで脇役、かつ金融自由化を推進している立場に逆行(しかし、地価高騰が世界的規模でのバブルという異常事態では、大蔵省の金融と税制が主役となるべきであり、実際、地価高騰に止めを刺したのは銀行局の「量的抑制(総量規制)」と主税局の「地価税」)

障害要因

  • 行政介入への自制+銀行側への過信: 当時の環境下では銀行の行動を強制的に規制する措置が素直に受け入れられる雰囲気ではない(「総量規制」を通達した3/90は世論・政治も後押し)+都銀だったら系列のノンバンク管理もしっかりしているだろう
  • 組織+なれあい: 企画立案業務が重視される霞ヶ関内で、銀行局内でも同様の力学が働き、監督・検査は手薄になりがち+天下り先の指定席確保のため、厳格な検査が事実上無理

地価高騰をバブルと認識せず実体経済に基づくものと判断+ましてその原因が金融機関の複雑な「財テク融資」にあるとは考えない=土地神話に基づくためか日銀や金融機関同様、土地関連融資が不良債権化した場合の想定なし→地価が高騰しているけど多少いきすぎている程度で、それは投機筋を排除すれば解決→金融機関に対し「投機的土地取引に関わる融資を”自粛”せよ」との通達=全体量を規制する3/90の「総量規制」まで、金融機関は網の目をくぐって融資続行→「総量規制」導入時はバブル最高潮

反省コメント

  • 「金融自由化の加速と同時に、金融機関に対する監督を強化し、金融機関のガバナンスを強める方策を採るべきだった。とくに、金融機関が不動産、建設、ノンバンクという三業種に異常な貸し付けを行っていたとき、もっと早めに警告なり規制なりを出すべきだった。」−黒田東彦 元財務官
  • 「わが国金融の問題点は、リスク処理の専門家であるべき銀行が、護送船団方式というリスクを最も回避できる立場に安住しリスク感覚をなくしたこと、行政がそれを許す環境を作ってしまったこと。・・・・問題が難しければ難しいほど、その前提に信頼がなければ事は進まない。我々の最大の反省点は、十分な信頼がえられなかったこと、それを前提にした処理ができなかったこと。行政としての役割をちゃんと果たしていなかったのではないかということも含めて。」-西村吉正 元銀行局長