米住宅ローン市場の約10%にすぎないサブプライム問題が、世界レベルで膨大な損失を生んだ原因は?
発生要因
販売側
- 押し売り(売上に比例した報酬制度)
- 与信基準の緩和
拡大要因
- 証券化: サブプライムローンが証券化され、その一部が健全な証券と混合 (e.g. CDO=腐りかけのリンゴを一部組み入れた証券化商品)、その他多数の組合せ商品も誕生、識別・リスク管理がより困難に
- グローバル化: 証券化商品の購入者=アメリカ以外に、ヨーロッパ、アジア、中東など世界の金融機関
- レバレッジ: ヘッジファンドなどは銀行からの借入資金を活用して10倍以上の資産を運用、円キャリー取引も活用(ほぼゼロ金利状態のところで円を借りドルに変換、高い金利商品で儲け、清算時には円安によって為替差益もゲット)
- Liquidity crisis(流動性の危機): ABCP(Asset Backed Commercial Paper)発行体の多くが銀行と信用補完契約(「万一のときは銀行さん全部引き受けてね」というような契約、通常はデフォルト率10%未満だったので大きなリスクなしに大儲できるので安易に契約: e.g. ABNアムロの契約額は1,000億ドル以上)→サブプライム問題が発生→買い手が見つからないので、銀行さん引き取って→銀行側はそんな資金ないよ→インターバンクのマーケットで資金不足→欧州の中央銀行が最初に資金をマーケットに投入→アメリカも続く
まとめると、変動金利型のサブプライムローンが、証券化という手法によって健全な証券の一部に進入しその存在を希釈化させ、グローバル化によって世界に拡散、レバレッジによって破壊力を数倍に増強させた状況下において、06年以降の住宅価格の下落により焦げ付きが増え、その後の急激な金利上昇(サブプライムローンを証券化した商品の価格が急落)によって起爆装置があちこちで作動、世界規模で爆発が続いている状態。
経営陣はなぜ制止できなかったのか?
- 専門性の尊重: e.g. 金融債権分野でも、住宅債券、財務証券など分野ごとに細分化され、それぞれの専門性が尊重されている企業文化→「木を見て森を見ず」という傾向が強い
- 属性: 企業ではなくチーム単位(ある分野が儲かりそう→その分野のエースを中心としたチームをまとめて採用、やめるときもチームごと全員という場合多い)
これまで貢献してきたチームに対して自分がブレーキをかけたら、そのチームごと会社から出ていってしまうかもしれないし、たとえ社長でも、本人が専門分野に口出しできる程の知識はない。その結果、儲けられる時は、莫大な利益を計上する一方、今回のようなケースでは、莫大な損失を出してしまう。
トップクラスの投資銀行は、様々な分野で一流のプロを雇っているので撤退するのも早く、儲けられる時にはガッポリ儲けているので、持久力もある。一方、トップクラスでない金融機関は二流専門家を雇っていて、購入商品も質の悪いものが多く、撤退も遅くなる傾向があり、今回のようなケースでは大損し、持久力もないため、倒産・買収されるケースが多い。