スランプ克服・脱出-IV

対処法: 対極が松井型 vs. 羽生型、その中間がイチロー

通常は好不調の要因を自分の内部に求める。しかし、羽生さんは内的要因だけでなく、外的要因にまで言及。しかも、通常は直接操作できない外的要因のほうが対応しやすいとの感覚。「この形には絶対もっていかない」という形はいくつかあるけど、「これは絶対にやらない」という戦法はないというように、もともと柔軟性のある羽生さんだからこそ、自分の理想の形にこだわらない全天候型スタイルだからこそ、まわりの時流に沿っていれば、大きく外れることはないという独特の調整法。

「打撃に対する自分のアプローチを変えないこと、悪い部分は修正していくけど、根本的な考え方や取り組みは決して変えない」のように、自分の基本や理想に戻り、そこを軸として変化に対応しようとする松井型と、軸はもたず柔軟に時流に合わせる羽生型。中間がイチロー型。大多数の人にとっては、松井型の方が受け入れられやすいのでは。

目標設定: 完全性 vs. 全体性

完全性は欠点を排除することによって達成されるが、全体性はむしろ欠点を受け入れ、統合しようとする。完全性は多くの人にとって共通の目標を与えるが、全体性は個々人が影の部分を受け入れることによって達成されるため、個性が強く、万人共通の目標やモデルとはならない。しかし、完全性を達成可能な目標であると思い誤ると、その理想は我々を励ますより苦しめることが多い。ついには、自己嫌悪や自己否定にまで及ぶ。光のみで影のないイメージ「完全性」を追うか、影も自己として受け入れ全体として統合する「全体性」を追うか

スランプ克服の指針: 目的地・航路・現在地

航海における3つの指針、「目的地・航路・現在地」。いずれかを欠くと漂流してしまう。目的地が分からない、航路を知らない、現在地が分からない。これがスランプの一種。敵という目的地の変化、海流や風など航路という外的要因の変化、自分という現在地の変化。この3つを知っている人が、自力で海を渡っていける。

自分に適した対処法「松井型 vs. 羽生型」と目標「完全性 vs. 全体性」 を選択し、精神面ではコンプレックスの否定的な面のみならず、肯定的な面をも認めようとする建設的な姿勢で、流動的な「目的地・航路・現在地」を俯瞰して、見失わないこと、あるいは日頃からブレの幅を小さく保つこと。もし漂流したら、冷静に現在地を確認してから、目的地や航路を見定めた方が解決は早い。