生きがい・働きがいの本質-III

3. 生きがい・働きがいを与えるには

生きがい・働きがいの価値を再度見直すと、経営者・管理職にできることは、「君がいて本当に助かる」、「いつも気を使ってくれてありがとう」など、愛情と感謝の心を持って存在価値を認め、声に出して伝えること。そして、絶対唯一の神が住む陣営の知恵「幸せに気づかせてあげること」。なお、使命や志は、修身教授録 II経営の本質II 参照。

  • 対人(相対): 価値ある存在として感謝される、必要だと認められる
  • 自身(絶対): 使命に向かってまい進、自分の限界を超越、世間体ではなく本人のみが感じる高揚

陽を伸ばすものは陰の力で、陰を伸ばすものは陽の力。どちらか一方がなければもう一方も存在し得ない。森羅万象、宇宙のありとあらゆる物は、相反する陰と陽の二気によって消長盛衰し、陰と陽の二気が調和して初めて自然の秩序が保たれる「陰陽の二極性・相乗効果・バランス」のように、一部分においては、神や天のような自分ではどうにもならない存在を認めると、世渡り上手になれるはず。その中でも世渡り名人クラスが、中村天風さん、松下幸之助さん、安岡正篤さん、稲盛和夫さん。いずれも天の存在を認め、自らの価値観を哲学の域まで高めた達人。

1) 愛情と感謝の心を持って存在価値を認め、声に出して伝えること

  • ある社員の出来が悪いので、どうやって退職させようか考えていた社長いわく、「彼女を面接して、この子はいいと直感して雇ったのは私です。自分の責任で彼女を雇ったんです。だからこそ、彼女が思ったより要領が良くなかったので、彼女を雇った自分の失策に腹を立てていたんです。私は、彼女を雇おうと決めた時、『経営者として雇うと決める限りは、何があってもこの人を愛するんだ』と、決心するのを忘れていたんですね。人間は道具ではないんですから、すぐに「ダメだったらとりかえる」というのでは、経営者としては失格だということに気づいたんです。損得勘定はやめて、愛する決心をしようと。そう決めると不思議なことに、寿退社やライバル会社からの引き抜きなどで急に退社していった社員らも許せるようになりました。これまでは、せっかく一人前に育てたのに会社を辞められて大損したと、恨んでいたんです。でも、愛する決心をして雇ったのなら、辞めていくときも喜んで送り出してやるべきなんですね。損得の問題ではなく、そんなことをみんなひっくるめて、経営者としての役割がそこにあるのですから。」
  • One Piece 白ヒゲいわく、「あいつの罪は…海賊船で最もやっちゃならねェ仲間殺しだ…!! 鉄の掟を破ったのさ。おれの船に乗せたからにゃあ、どんなバカでもおれの息子よ。殺された息子の魂は何処へ行くんだ…!! 仁義を欠いちゃあ この人の世は渡っちゃあいけねェんだと、ティーチのバカに教えてやるのが おれの責任だろうがよ…!!!」
  • 瀬古利彦などSB食品のマラソン全盛時代を築いた中村清 元監督いわく、「(選手の食費や合宿のため、あの山も土地も売ったんですか。お父さん、私や娘が将来生きていけるだけのものは最低限残しておいて下さいと奥さんから言われたことに対し) それくらいでなきゃ、世界一のランナーは育てられないよ。」
  • 世界的ベストセラー Being Happy いわく、「あなたが今、生後三ヶ月の赤ちゃんを育てているとしょう。赤ちゃんにミルクをあげる時、あなたは『私を喜ばせてくれたり、座っておしゃべりしてくれたりしないと、飲ませてあげないわよ』などとは言わないはず。あなたはただ、その赤ちゃんはミルクを飲ませてあげるに価する存在だから、飲ませてあげるのだ。 赤ちゃんは、愛され、大切にされる価値があるのだ。 それと同じように、あなた自身も人間として、宇宙の一員として、愛され、大切にされる価値を持っている。あなたは、生まれた時と同じように、今も価値ある存在なのだ。あなたは、ただあなたであるというだけで、愛され、大切にされるべき、価値ある存在なのだ- You deserve love & respect just because you are you」

2) 幸せに気づかせてあげること

  • 組織経営学者 飯田助教授の生きがいシリーズいわく、「人生ってのは、思い通りにならないところに価値がある。だから、わざわざ自分でつらいことをいっぱい計画して生まれてくるんだ」、「自分から求めて訪れてきた思い通りにならない環境で、生まれる前に自分自身で用意しておいた人生という名の問題集を解いているのが人生」、「自分で選択した人生なんだから、全てを甘んじて受け入れよう」、「艱難辛苦があれば、まずその意味を考え-> それをいま学ぶ必要がある-> だから試練が目の前に現れたんだ-> でも自分で立てた計画通りの試練なので むしろ順調な証拠」
  • 続けていわく、「艱難辛苦に直面したとき、この試練を乗り越えることができると強い信念を持てば、心の奥底に組み込まれている問題解決プログラム、病気でいう心の治癒力が働き出して、試練をつらいと思う気持ちが軽くなり、解決法が見つかったりするのではないか。なぜなら、そもそも生まれる前に自分自身で計画してきた試練であれば、その解決法も心の奥底では知っているはずだから。試験問題を解いている横に回答があったら勉強にならないので、生まれる瞬間に回答が丸見えにならないように潜在意識の奥に隠しているはず。」
  • 稲盛和夫さんいわく、「会社に残ってほしいのは、鈍な人より才気のある人だが、現実は逆。才気ある人は、目先が利くためか、仕事に見切りをつけ、会社を見限る。会社に残るのは、利発でもない、気も利かない、真面目だけが取柄の鈍な人。しかし、鈍な人材は、愚直に、真面目に、誠実に、10年、20年、30年とコツコツと歩み、いつのまにか非凡な人材に変わっている。彼らの成長に気づかされ、自分の不明を恥じるようになった。継続する力こそ、仕事を成功に導き、人生を価値あるものにすることができる真の能力。」