死生観の本質-III

4. 青年士官の死生観:「敗れて目覚める、俺達はその先導になる、日本の新生に先駆けて散る」

  • 兵学校出身者: 「国のため、君のために死ぬ。それでいいじゃないか。それ以上に何が必要なんだ。もって瞑すべきじゃないか。」
  • 学徒出身者: 「君国のために散る、それは分かる。だが一体それは、どういうことにつながっているのだ。俺の死、俺の生命、また日本全体の敗北、それをさらに一般的な、普遍的な、何か価値というようなものに結び付けたいのだ。これら一切のことは、一体何のためにあるのだ。」
  • 兵学校出身者: 「それは理屈だ。無用な、むしろ有害な屁理屈だ。貴様は特攻隊の菊水のマークを胸に附けて、天皇陛下万歳と死ねて、それで嬉しくないのか。」
  • 学徒出身者: 「それだけじゃ嫌だ。もっと何かが必要なのだ。」
  • 兵学校出身者: 「よし、そういう腐った性根を叩き直してやる。・・・・(鉄拳の雨、乱闘の修羅場へ)」

そうした中、兵学校出身の臼淵大尉 いわく、「進歩のない者は決して勝たない。負けて目覚める事が最上の道だ。日本は進歩という事を軽んじ過ぎた。私的な潔癖や徳義に拘って、本当の進歩を忘れてきた。敗れて目覚める、それ以外にどうして日本が救われるか。いま目覚めずして救われるか。俺達はその先導になるのだ。日本の新生に先駆けて散る。まさに本望じゃないか。」

参考:

a) 500巻に及ぶ人間の歴史を一行で要約・・・「人は、生まれ、苦しみ、そして死ぬ」

サマセット・モーム「人間の絆 Of Human Bondage」より・・・人間の歴史を知りたいある国王は、賢者に命じて人間の歴史を書いた500巻を集めさせた。でも読む時間がないので、要約するよう命じた。それから、20年後に賢者らは1/10に要約した50巻の書物を宮廷に持参。今度は読む気力がないので、もっと短く要約するよう命じた。さらに20年後、賢者らは杖をつきながら、一冊の書物を宮廷に持参。しかし国王は臨終のベッドの中。そこで、賢者らは人間の歴史を一行に要約して聞かせた。それは、「人は、生まれ、苦しみ、そして死ぬ」。

b) 「早く自分も死んで、お母さんのところへ行きたいわ」と嘆く娘のところに、先立った母の意識体が「光」として現れて語ったメッセージ

「あなたはまだ、その時じゃないわ。まだ、そちらでの仕事が終わっていないもの。あなたはそこに残って、一瞬、一瞬を精一杯に生きなければならないの。美しい地上に生きるという贈り物を、味わわなければならないのよ。
これだけは、言い残しておくわね。夕日も、花も、大切な人も、ひとつひとつ、喜びをもって見つめなさい。そして、ほかの人にも、その喜びを、教えてあげなさい。愛を注いであげなさい。愛は、ほかの何よりも大切なものだから。母さんは、いつも、あなたのそばにいるわよ。」

c) 自分の死期が近づいてきたら・・・大切な人々との別れの言葉

「これまでどうもありがとう。そろそろ、ちょっと先に行って待ってるから。でも、待っている間も、ずっとそばで見守ってあげるから、安心して。それじゃ、行ってくるね。」
「こちらこそ、どうもありがとう。私はもう少しここで勉強して行くから、先に行ってゆっくり休んでいてね。でも、私のこと ちゃんと見守っていてよ。それじゃ、いってらっしゃい。」

d) 生きるって切ないね

禅僧 南直哉いわく、私が仏教に共感しているのは、「生きているって素晴らしいよね」より「生きるって切ないよね」という捉え方。「苦しくて切なく悲しいことのほうが多い」という前提のほうが、納得しやすい。