「生きがいシリーズ」- I

今回は、総計160万部超のベストセラー 組織経営学者 飯田助教授の生きがいシリーズ三部作、その集大成「生きがいの本質」。Know-how に終始した前二作、どのようにして生まれてきたかという仕組み-「生きがいの創造」、どのようにすれば生きがいを持つことができるという技術論-「生きがいのマネジメント」に対し、そもそも ”なぜ生きているのか?” のwhyにフォーカスしたのが「生きがいの本質」。これまでの生きがい論との共通点も含め新たな視点を抜粋・・・

共通点: 心の置き所

「死後の生命」や「生まれ変わり」に関する学者や医者の研究成果、および第一作「生きがいの創造」の読者からの感動的な手紙をもとに、誤解をさけるようできるだけ客観的に展開しているものの、テーマがテーマだけにどうしても宗教的な経典と似通ってしまうため、宗教まがいの洗脳本と揶揄されがち。だた、宗教も含め「生きがい論」の多くが指摘する結論、「心の置き所を変えよ」。つまり艱難辛苦、人生には思い通りにならないことがたくさんあるけど、それを乗り越えることで自分が成長できるのだから、それらをあまんじて受け入れなさい。

以前に書いた「天の存在」でもふれたように、命に宿る宿命を天命と受け止め、いかなる艱難辛苦にあっても自分を成長させる機会だ、これを乗り越える機会をわざわざ天が与えてくれたのだと、超ポジティブにとらえる陰から陽への心の持ち方。あるいは、どうせなら人生の辛酸というメニューを片っ端からなめつくし、人生をしっかりと味わってみようという肝の据わり方。経営の神様 幸之助のじいちゃんでも「90%はうまくいかない」といっているくらいなので、人生を前向きにとらえる先人の知恵。

新たな視点:

1) 思い通りにならない = 何らかの修行をするために生まれてきた = 試練はむしろ順調な証拠

「思い通りにならない」人生を苦悩しながら生きるからこそ、「願いがかなう喜び」に自然と感謝の気持ちがわき、生きている喜びを実感する。その壁が険しければ険しいほど、達成感はより深まるので、「思い通りにならないことほど価値がある」と導き、人間は「思い通りにならない」人生を通じて、「何らかの修行をするために生まれてきた、試練はむしろ順調な証拠」という結論へ。それが、著者が解く ”なぜ生きているのか” の答え。逆に言えば、何にも苦労がなく何でも思い通りになるなら、あの世にいればいいので、わざわざこの世に生まれてくる必要はない。
それをうまく表現した幼児の何気ない一言、「生まれてきたら、何にも思い通りにならないね。動けないし、しゃべれないし、苦しいことがいっぱいあるから、赤ちゃんは泣くのかな」。

2) 自分で選択した人生

第一作「生きがいの創造」の読者からの手紙-双子の男の子が4歳のとき母親に話してくれた内容・・・
「ぼくがお母さんのお腹の中にくるまえはね、暗くって大きい森の中に住んでいたんだよ。・・・ぼくは暗い森の中をいっぱい歩いて、その森の中の途中でけんじくんにあったんだ。・・・ぼくと同じようにけんじくんもいつもテレビでお父さんやお母さんのことを見てたんだって。そしてぼくたちは一緒に冒険したんだ。森の道を二人で行くと、地図がおいてあって、その地図には3本の道があったけど、『真ん中を通ると君たちのお父さんやお母さんに会えます』、って書いてあった。ほかの道は、虫のお父さんやお母さんに会えるのだったよ。ぼくたちは道の真ん中を進んだよ。そうすると、その道の先に滑り台があって、ぼくが一番に滑ったんだよ。けんじくんは次に滑ったんだ。そして、お父さんやお母さんに会いにきたってわけ。」

科学的には少し胡散臭さを感じるが、「ママに会うために生まれてきたんだよ」、「私、お母さんのところに生まれるって知っていたから・・・」など、ほかにも似たような手紙が多くよせられたとのこと。それら幼児がふとした瞬間に口にする共通点が、「子供はよほどの理由があって、慎重に吟味したうえで、両親となるべき男女を選んで生まれてくる」ということ。

思い通りにならないことに直面すると、「自分が選んだのではないのにどうして私だけこんな目に・・・」と逃げがちになる。テレビドラマに出てきそうなせりふ、「両親が勝手に私を生んだのよ」。その場合、双子の男の子の話「ぼくたちは道の真ん中を進んだよ」のように、「自分で選択した人生なんだから、全てを甘んじて受け入れよう」と心の置き所をかえると、艱難辛苦を前向きに捉えられるはず。

そうすると、「人生ってのは、思い通りにならないところに価値がある。だから、わざわざ自分でつらいことをいっぱい計画して生まれてくるんだ」とか、「自分から求めて訪れてきた思い通りにならない環境で、生まれる前に自分自身で用意しておいた人生という名の問題集を解いているのが人生」、「様々な試練は むしろ順調な証拠」、「たとえプラスの意味など見出せないような計画外の試練にあっても、それを乗り越えられる選ばれた貴重な存在なんだ、計画内のルートでは上れないより高みの境地に達する試練なんだ」、と達観した心境になれるはず。

参考

a) 失恋を乗り切るには: プラス思考 vs. ブレイクスルー思考

  • プラス思考: これで良かった、失恋から学べば、自分にとってプラスになるはず。もっといい人に出会えるための機会なのかも。
  • ブレイクスルー思考: 生まれる前に自分で計画しておいた予定通りの失恋。人生のこの時期この段階で異性関係について大いに学ぶよう人生計画を立てていたからで、そのために最適な現象として失恋という試練が生じた。その人と失恋する体験が、どうしてもいま必要だった。予定通り順調に体験できたので、今後はその体験を活かしていけるはず。

もともと意味がなかった失恋、挫折をものともせず120%のエネルギーで這い上がり、不運に立ち向かいながら生きようとする「プラス思考」に対し、失恋という現象よりも先に「人生のこの時期・段階で異性関係について大いに学ぶ」という意味があって、それを実現化させるために失恋という試練が発生したと解釈する「ブレイクスルー思考」

艱難辛苦があれば-> まずその意味を考え-> それをいま学ぶ必要がある-> だから試練が目の前に現れた-> でも自分で立てた計画通りの試練なので むしろ順調な証拠、という解釈。意味が現象に優先するという捉え方。

b) 夫婦げんかを乗り切るには: 「私とあなた」から「私たち」

夫婦げんかの基本パターンは、「あなたは無駄遣いしすぎるのよ」、「オレはそんなに使っていない!」など、あなたと私がすっかり離れてしまうこと。解決策は、「ねえ、私たち どうしたらもっと節約できるかしら」のように、「私たち」という主語を使えば、共通の利害・目的というニュアンスで話を進めることができ、夫も「そうだな、オレがちょと無駄遣いしているかもしれないな」と素直になれるもの。利害関係が衝突する交渉相手にも応用できる考え方。